魔王と王女の物語
その後ラスの身体を綺麗に拭いてやり、魔王絶賛推薦のピンクのネグリジェを着せてランプ1つの部屋に戻って息をついた。


「夜に気を付けろ、か。ま、一応やっとくか」


「何を?」


「目隠しー」


ぱん、と両手を合掌するように合せてゆっくり離すと手と手の間から白い光が生まれて、ヴェールのように宿屋だけを包み込む。


コハクが淹れてくれたホットミルクを飲みながらベッドに腰掛けていたラスが魔法を使っているコハクを興味津々で見て、

マグカップをテーブルに置くと手と手を合わせて真似をしてみた。


「魔法ってすごいね。コーは世界一の魔法使いなの?」


「まあな。一応世界征服とかしてみようと思ったんだけどチビの父ちゃんに邪魔されたんだ」


一緒のベッドに入り、ビスケットの上にかかっていた蜂蜜だけを指で拭い、ラスの頬につけるとぺろぺろと舐めた。


「くすぐったい!どうして私のほっぺたにつけたの?」


「チビを食べたいから」


「やん、ふわふわする」


「今のかーわいい。も1回“やん”って言ってみろよ」


肩を抱いてまたぺろぺろしていると…



ぐぉおおおーーっ!!



――外からおよそ人間ではない声がして、ラスが飛び上がった。


直後地響きがして、坂の上から何かが徒党を組んで下って来る足音がする。


「こ、コー…」


「じっとしてろよ」


ランプの灯を消して窓の縁から外を見下ろすと…


緑や褐色、赤や黒といった色の巨体をくねらせながら行進する恐竜のような姿をした魔物がぞろぞろと歩き、咆哮を上げる。


「あんなに居るのにあいつらも町から出れねえのか?」


魔物たちはただ町の中をうろつくだけで、外には出れない様子だ。

ラスはコハクの背中に抱き着きながら外を見て、脚を震えさせていた。


「り、リロイとティアラは、大丈夫かな…」


「平気だろ。チビ、怖かったら布団被って耳塞いでろ」


「う、ううん、コーの傍に居る」


きゅんっ。


「なにお前。こんな時にコーフンさせんなっつーの」


相変らず緊張感のない魔王。


だが何をすべきかは、わかっていた。
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