魔王と王女の物語
ネックレスの効果で魔物には襲われないのだが…とにかく怖い。


山のように大きな魔物がごろごろ居て、しかもさっきから頭が3つある真っ黒い犬がどうしたことか次々と魔物の喉笛に食らいついて噛み殺していた。


「コー、どこ?怖いよ…どこなの?」


「ここー」


振り返ると…コハクは裾が破れて太股が露わになっているラスの格好を見てにやにやしながら目の前に立った。


「言いつけを破ったな?後でお仕置きしてやるからな」


「だって…コーが居ないとヤなんだもん」


「可愛いことばっか言やがって。それにチビ…その格好、そそるぜ」


「これ?枝で裂けちゃったの。だから破いちゃった」


――太股半ばでラス自らの手で破られたドレス姿。

ますますにやつきが止まらないコハクは片腕だけでラスを抱っこすると、魔物を全滅させたケルベロスを呼び寄せた。


「こいつ、俺の飼い犬。ケルベロスって言うんだ」


「わあ、おっきいね。可愛い顔してるー」


にこっと笑ったラスに、真ん中の頭のケルベロスがぺろんとラスの頬を舐めて、とりあえず人間でも魔物でもやきもちを妬く魔王から遠ざけられた。


『美味そうっ。魔王様、食っていいの?』


「ふざけんなよこいつは俺の花嫁だぞ。もう1度舐めたりしたら首を1つ落としてやるからな」


「花嫁?コーったら駄目だよ?結婚は好きな人としないと」


「…」


――想いは相変わらず一方通行。

ケルベロスの頭が3つとも大笑いをして、魔王は舌打ちをしながらラスの太股を撫でた。


「まだ1番つええのが残ってる。俺が直接殺してやっかー」


「コー、大丈夫?怪我したりしない?」


「怪我したらぺろぺろしてくれよ。したら治るから」


「うん、わかった」


――ケルベロスの大きな身体に抱き着き、尻尾を振る飼い犬にまたもやめらめらと嫉妬心を燃やしつつ、

さっきから住民が避難している洞窟の中を覗き込んでいる魔物に声をかけた。


「おい、そこの熊ヤロウ、こっち向けよ。熊鍋にしてやろうか?焼き肉のがいいか?」


黒い大きな熊が振り返る。

瞳は血の色で、牙を剥いて口を裂けさせて笑った。
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