魔王と王女の物語
『ホワイト、ストーン…よこせ…』
熊の魔物が喋った。
コハクを無視してまた洞窟の中を覗き込み、鋭い爪のついた前脚を伸ばして要求する。
「それは俺が貰うんだから駄目だっつーの。おいこら、無視すんなよ」
うぜえ、と呟いて髪をかきながら無造作に熊の魔物に近づき、ラスが泣きそうな声を上げる。
「コー!」
「チビ、そこに居ろよ」
コハクが距離を縮めると熊の魔物が振り向き、馬鹿にしたような笑みを浮かべているコハクを全身眺めて…またにたりと笑った。
「お前も、美味そう…」
「グルメなのは認めるけどさあ…うおっ!?」
巨体には似つかわしくない俊敏な動作でコハクのマントを切り裂き、腕に裂傷を負った。
「コー、やだ!」
「へーき。でもちょっとムカついたから、半殺しじゃなくて全殺し決定な」
ぐおお、と吠えた直後、熊の魔物の口から炎が噴き出てみるみる森が真っ赤に焼けただれてゆく。
――自分だけではなく、ラスをも巻き込もうとしている熊の魔物に完全に頭にキた魔王は…ぼろぼろになったマントを落として、胸に手を突っ込んだ。
そして体内から真っ黒な剣を抜き、魔法使いが杖を持つのではなく剣を手にしたことで住民たちもラスも驚く。
「ま、食ったって美味くないだろうからケルベロスの餌にしてやる」
『やったー』
ラスを守るようにして伏せをしているケルベロスが喜び、コハクと熊の魔物も同時に駆けて、コハクが懐でふっと身体を沈ませると、股の間から頭の天辺までを…
一気に真っ二つに切り裂いた。
「きゃあっ!」
「チビは見んなよ。後ろ向いとけ」
「う、うん」
鮮血を迸らせて絶命した熊の魔物にケルベロスが駆け寄って餌になってしまった時、ようやくリロイが駆けつけて荒い息を吐きながら両手で顔を覆っているラスを抱きしめた。
「ラス、どうしてここに?」
「コーが気になって…。リロイは平気?」
「うん、大丈夫。上に魔物が溢れて来る洞窟があるんだ。それを塞がないと」
魔王がまた胸に黒い剣をしまいながらにやっと笑った。
「よし、俺が勇者様決定だ」
熊の魔物が喋った。
コハクを無視してまた洞窟の中を覗き込み、鋭い爪のついた前脚を伸ばして要求する。
「それは俺が貰うんだから駄目だっつーの。おいこら、無視すんなよ」
うぜえ、と呟いて髪をかきながら無造作に熊の魔物に近づき、ラスが泣きそうな声を上げる。
「コー!」
「チビ、そこに居ろよ」
コハクが距離を縮めると熊の魔物が振り向き、馬鹿にしたような笑みを浮かべているコハクを全身眺めて…またにたりと笑った。
「お前も、美味そう…」
「グルメなのは認めるけどさあ…うおっ!?」
巨体には似つかわしくない俊敏な動作でコハクのマントを切り裂き、腕に裂傷を負った。
「コー、やだ!」
「へーき。でもちょっとムカついたから、半殺しじゃなくて全殺し決定な」
ぐおお、と吠えた直後、熊の魔物の口から炎が噴き出てみるみる森が真っ赤に焼けただれてゆく。
――自分だけではなく、ラスをも巻き込もうとしている熊の魔物に完全に頭にキた魔王は…ぼろぼろになったマントを落として、胸に手を突っ込んだ。
そして体内から真っ黒な剣を抜き、魔法使いが杖を持つのではなく剣を手にしたことで住民たちもラスも驚く。
「ま、食ったって美味くないだろうからケルベロスの餌にしてやる」
『やったー』
ラスを守るようにして伏せをしているケルベロスが喜び、コハクと熊の魔物も同時に駆けて、コハクが懐でふっと身体を沈ませると、股の間から頭の天辺までを…
一気に真っ二つに切り裂いた。
「きゃあっ!」
「チビは見んなよ。後ろ向いとけ」
「う、うん」
鮮血を迸らせて絶命した熊の魔物にケルベロスが駆け寄って餌になってしまった時、ようやくリロイが駆けつけて荒い息を吐きながら両手で顔を覆っているラスを抱きしめた。
「ラス、どうしてここに?」
「コーが気になって…。リロイは平気?」
「うん、大丈夫。上に魔物が溢れて来る洞窟があるんだ。それを塞がないと」
魔王がまた胸に黒い剣をしまいながらにやっと笑った。
「よし、俺が勇者様決定だ」