魔王と王女の物語
空は暗雲が立ち込め、真っ暗になっていた。

心細さにコハクのマントを握り、身を寄せるラスに萌えつつ、


最初は小さかった真っ赤な星のようなものが急接近してきてそれが隕石だとわかると、リロイがラスを無理矢理抱き上げて茂みに向かって走り出した。


「リロイ、やだ!」


「あれは隕石だ!あんなのが落ちたら死んでしまう!」


だが魔王は微動だにせず、ケルベロスが最後の1匹だと言わんばかりにして魔物を噛み殺し、猛ダッシュしてその場から離れた。


「行くぜ」


その場から動かない魔王が空を見上げ、洞窟よりも少し大きめの真っ赤な隕石を見てにやりと笑った。


直後、轟音と共に洞窟の穴に隕石が落下して、炎が吹き上がる。

魔王は熱風に髪を揺らしながらラスには見せたことのない禍々しい笑みを浮かべていた。


…本当はもうちょっと遊んでいたかったのだが…

ラスがここまで自分を捜して来たことに免じてすぐに穴を塞ぎ、茂みからひょこっと顔を出しているラスに向かって両腕を広げると、

リロイの制止を振り切って腕の中に飛び込んできて、きゅんが止まらなくなる。


「もしかして怖がってんのか?かーわいいなあ」


「コーが降らせたの?もう魔物は出てこない?」


「ああ。魔界のどこかと繋がってたんだろうな。なあチビ、俺は後始末があるから小僧と一緒に居ろよ。わかったか?」


「うん、わかった」


そう言ってちゅっと頬にキスをすると足早に丘を下りて行くコハクの跡を追いかけたかったが、

今度は暗雲から豪雨が降り注ぎ、炎上している森の火をみるみる消してゆく。

…どこまでも底のない魔王の魔力にリロイはぞっとしたが、ラスに真っ黒いマントのフードを頭に被せて駆け降りた。


――その頃魔王は洞窟に着き…若い女を壁際に追いつめて、一戦交えていた。


「本当はチビがいいんだけど、そうもいかねえわけ。お前は代わりな、勘違いすんじゃねえぞ」


「はい…っ、コハク様、素敵…っ!」


魅惑的な笑みを浮かべていると…


「コー…?まだ町に戻らないの?」


入り口からラスの声が聴こえて少し焦りながら振り返る。


ラスは…きょとんとしていた。
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