魔王と王女の物語
「チビー、戻ったぞー」


一応若干緊張しつつコハクが部屋に戻ると、部屋にラスは居なかった。


が、バスルームから水の音がしてノックもせずに開けると…


膝を抱えて首まで浸かったラスが居て、唇は…限りなく尖っていた。


“お帰り”の一言もなくくるりと背を向けると話をすることを拒絶され、


魔物とやり合っている時は汗のひとつも出なかったのに…

額にじんわりと汗がにじみ出る。


「チビ?どした?」


「…別に。ゆっくり入りたいからあっち行ってて」


「そう言うなよ、俺だって体力と気力使うレベルの高い魔法使ってくたくたなんだからさー」


「…お風呂に入りたいなら入っていいよ、もう上がるから」


ざばっと立ち上がり、身体も隠さないまま横を通って部屋に戻ってしまったラスを追いかけて、後ろからバスタオルで身体を包むとぎゅっと抱きしめた。


「どうしたんだよ、なんで拗ねてんだ?労を労ってほしいのになー」


「あの女の人に労ってもらってたんじゃないの?気が済むまで遊んできてもいいよ」


いつもは自分で服さえ着ないのに、昨晩着ていたネグリジェを自分で着てこっちを見ないラスに…


魔王もかなり焦っていた。


「チビ?お前さっきの…俺が何してたか知ってるのか?」


「知らないし知りたくない。町の“勇者様”になれて良かったね。みんなに祝ってもらっておいで」


髪もずぶ濡れ、身体も満足に拭かずにベッドに寝ころがって毛布を被り、


さすがの魔王も、頭にキた。


「チビの“勇者様”になりたいから頑張ったのに…なんだよその態度は。そんな拗ねたチビは可愛くないぞ」


「いいもん。コーに関係ないでしょ」


――“チビを抱けない鬱憤晴らしで他の女を抱いてます”


さすがに露骨に言えず、


ただラスが嫉妬していることはその態度と言葉でわかったので、隣に潜り込むと脚を絡めて温めてやり、バスタオルで髪と身体を拭いてやりながら耳にキスをした。


「いっちょまえに嫉妬しやがって。俺はチビが1番なの。2番も3番もチビなわけ。俺にどうしてほしい?」


「……抱っこして」


嫉妬するラスに魔王、大コーフン。
< 140 / 392 >

この作品をシェア

pagetop