魔王と王女の物語
鼻を押さえてうずくまったリロイに驚いたラスが馬乗りになっているコハクの肩を押して起き上がると裸同然の姿のまま駆け寄って、

手の隙間から溢れ出る血を見て顔を覗き込んだ。


「大丈夫!?鼻血がすごいよ!」


「ちょ、ら、ラス、離れて!」


「小僧、邪魔すんな!てめえ窓から放り投げるぞ!」


ラスの胸が腕にあたってますます鼻血が止まらなくなりつつも…

リロイの瞳はその胸にくぎ付けになっていて、荒々しく近寄ってきたコハクがガウンでラスの身体を包み込むと人攫いのように肩に担いでベッドに戻した。


「俺のチビの裸を見たな…?しかもお前…なにコーフンしてんだよ!」


「!ラス、見ないで!」


「あ…、リロイ…どうしちゃったの?」


「チビ!見たいなら俺の見せてやるから小僧のなんか見んな!」


慌てて背を向けて耳を真っ赤にさせているリロイはやけに可愛くて、

ラスはもたもたと髪を頭の上でまとめるとコハクに“ドレスを出して”とねだり、自分の胸を見下ろした。


「私のもリロイのみたくおっきくならないかなあ?」


「あれは男の特権なの!いつか俺がチビを喜ばせて…」


「影!ラスを言葉で穢すな!」


ようやく落ち着きを取り戻したリロイが立ち上がり、階下へ降りて行く。


「コー、村長さんたちのお話聞かなきゃ」


「んー、もう大体わかってるから別にいいや。貰えるもん貰ってもてなされようぜ」


「うんっ」


――そしてコハクと1階へ降りると談話室は住民でごった返していて、町を救った英雄の登場にどっと沸き、次々と食事が運び込まれていた。


「ラスっ」


「あ、ティアラ!すごいご馳走だね、食べていいのかなあ?」


「食っとけ食っとけ。村長、保存食があったらかき集めて俺の所に持って来い。仕方ねえから旅の道中食ってやるよ」


「はい、喜んで!コハク様、本当にありがとうございます!」


魔王が人々から感謝される――


ティアラとリロイはものすごく不思議な気分に陥っていたが、ラスは美味しそうに料理を頬張っていて、その姿を見れるだけで幸せだった。


「コハク様、これを」


待ち望んだものが――
< 142 / 392 >

この作品をシェア

pagetop