魔王と王女の物語
表情の動かないラスを見るのは正直言ってかなり居たたまれなかった。


だが…ラスから目を離して1人にさせてしまった責任は自分にある。


「で?次は何すりゃいいんだよ」


「簡単には解かないわ。そうね…この森を元通りにしてもらえるかしら。綺麗に戻してくれたら、呪いを解いてあげるわ」


ぶちっ。


――コハクからものすごい音がして、抱っこされていたラスが慌ててコハクの頭を胸に押し抱くと抑揚のない声で引き留めた。


「コー、駄目。やめて、お願い」


「だってこいつ…!無茶難題ばっか吹っかけてきやがって!第一森を焼いたのは俺たちじゃないんだぞ!?」


ついラスを怒鳴ってしまったコハクは、感情を奪われたラスの肩が震えているのを見て我に返ると大きく深呼吸をして、ブランコに座らせた。


「ごめん…」


「ううん、いいの。ねえコー、森を元に戻せるの?戻せないの?」


「…時間をかければできるけど…」


「じゃあお願い、森を元に…。私を…元に…」


「ああ…。俺に任せろ。チビ、ごめんな。俺が離れたから…」


「ううん、私がコーから勝手に離れて行ったの。私こそごめんね」


――なんとも感動する光景。


…そのはずなのに、女王は鼻で笑うとさっさと玉座の間から出て行った。


「女王様って…怖い妖精さんだね」


「ああ。チビ…俺を信じろよ。数日で森を再生させて、お前を元に戻してやるからな」


「うん、待ってる」


ラスの頬を両手で包んでキスをして立ち上がった時、ちょうど玉座の間にグラースから話を聞いたリロイが駆けこんできた。


「ラス!!」


「リロイ…」


「影…!お前、何やってたんだ!!!」


がつ、っと痛そうな音がして、顔を上げると…


コハクの唇の端からは血が滴っていて、口の中の血を吐きだすと俯き、舌打ちをした。


「ちっ、痛ぇな…」


いつもなら軽く躱して仕返しでもするところだが、リロイの拳を甘んじて受けたのは…己の過失だと痛感しているから。


「コー…」


「行って来る。小僧の傍に居ろよ」


こんな真剣な顔をしたコハクは、はじめてだった。
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