魔王と王女の物語
四精霊のうちの地・水・風の精霊を呼び出したコハクは、精霊たちがそれぞれの役割を果たしていくのを腕を組んで見守っていた。


――一瞬でも精神集中を削いではならない。

元々人に操られることなどまっぴらな四精霊を従えているのは、こうして力を誇示して確認させているからだ。


少しでも判断を間違えば彼らはすぐに離れていくし、彼らと結んだ契約も破棄される。


――ラスに会いたい。


だがラスに次に会う時は、その顔にはいつもの輝く笑顔が戻っているはずだ。


その笑顔を見るまでは、会わない。


…さっきはバルコニーに出て来たラスを見てつい感情が吹き出して、聴こえないとわかっていながらも愛の言葉を口に乗せたが…


「…聴こえてるはず、ねえか」


『これでいいのよね?』


シルフィードがさっきまでぼろぼろで崩れ落ちそうになっていた大木を指すと、

その大木は瑞々しい若葉を枝いっぱいにつけて、ウンディーネがもたらす水を全身に受けようと枝を大きく広げていた。


「ああ、それでいい。ノーム」


『土は弱っとらん。逆に葉が落ちて栄養になっとるくらいだから儂が活性化させて腐葉土にしてやろう』


「こき使って悪いな、俺も頑張るからさ、一緒に頑張ろうぜ」


――普段偉ぶっている魔王とは全く様子が違う。


それは魔法使いとして、四精霊に敬意を払っているからだ。


有り余る力を持ちながら時々頼ってくれるコハクのことを、彼らも大好きだった。

そんなコハクが1人の女の笑顔を取り戻したいから、と言って頭を下げる。


特にウンディーネとシルフィードはそんな魔王をからかった。


『女たらしのコハクがたった1人の女を愛すると言うの?』


「ああそうさ、あいつが居れば他には何も要らねえ。…なんだよ」


『いいえ、興味があっただけよ。私も可愛い女の子は大好きだから後で会わせてね』


「ああ」


『可愛くない女の子は私に任せておいて』


そう言ったのはシルフィードで、制裁をすると約束してくれてコハクの心もやや軽くなった。


『あなたのおチビさん…可愛いよね』


「…触らせねえからな」


やっぱりやきもち。
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