魔王と王女の物語
部屋の前にはリロイとグラースが立って女王がラスに悪さをしないように見張り、


そしてラスは窓から見える焼けた森を感情のこもらない瞳で見つめていた。


コハクが精霊を呼び出してからずっと雨が降り続けている。


…きっとコハクも濡れているだろう。

自分を元に戻すために必死になって頑張ってくれているコハクに会いたくて、ラスはドアをそっと開けた。


「ラス?どうしたの?」


「あの…コーは…」


「影なら外に居るよ。それと…ものすごい速さで森が再生してる。ラス、もうすぐだからね」


優しく微笑みかけてくれるリロイを見上げながら、考えていた。


コハクのために自分は何ができるだろうか?

“愛してる”と言ってくれたその気持ちになんと応えればいいのだろうか?


…だが答えは見つからず、とにかく会いたくてグラースの手を握った。


「コーに会いたいの。駄目?」


「…私が聞いて来よう」


グラースは元々あまり表情の動く方ではなく、感情を取り戻してもあまり笑わなかったが、ラスに対しては笑顔を向けてその場を離れると、


完全に火が消えた暗闇の中精霊たちと妖精たちが放つ光に包まれた森の中にコハクが立っていた。


「ラスが会いたがってる」


「今手が離せねえんだよ。3日間は無理だ。俺の代わりにはなれねえだろうけどお前と小僧でチビを見張っとけ。あいつは何をするかわからないからさ」


シルフィードが成長を促す風を森に送り続けていて、魔王の少し長い髪が風に揺れた。

黙っていればかなり綺麗な横顔は真剣で…グラースがそっとその場を離れると、コハクが振り向かずに言った。


「俺はチビになら殺されてもいい。だから城に着くまで俺の邪魔をするな。俺を生かすも殺すも、チビに選ばせる」


「…ああ。リロイにもそう伝えておく」


「…旅の道中俺の過去の悪事を知ってチビが離れて行ったら、後は小僧に一任する。それまでは俺は絶対にやられねえ。絶対だ」


――魔王がそんなことを考えていたのが意外すぎて、その後ろ姿からは魔王の表情を知ることはできなかったが…


ラスがコハクの命を握ってる――


ラスは、どんな選択をするのだろうか?
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