魔王と王女の物語
居ても立っても居られなくなったラスは深夜、バルコニーに出た。


…まだ雨は降り続いていて、そこからはコハクが腕を組んでじっと立っている姿が見えて声をかけようとした時…


「ラス、邪魔しちゃ駄目だよ」


「…リロイ」


「3日間は会わないって言ってたらしいよ。だから…ラスも我慢して」


自分のために頑張ってくれているコハクとあと3日間も会えない…


――ラスは一旦部屋に戻って紙にペンを走らせ、全く手をつけていないサンドウィッチをハンカチで包むとリロイに手渡した。


「これをコーに届けてあげて。リロイ、お願い」


「…ん、わかった。雨に濡れるから中に戻って休んで。いい?」


「うん、わかった」


その後部屋の中に戻って行ったラスを確認したリロイは螺旋階段を下りてコハクの元へ行くと、無言でハンカチを手渡した。


「なんだよ気色悪ぃな」


「僕からじゃない。ラスからに決まってるだろ」


互いに仏頂面になりながらコハクがハンカチを受け取って中身を確認すると…

中から手紙が出てきてそれを広げて…不気味に笑い出した。


「ふふふふふふ」


「…気色悪いぞ」


「チビはやっぱり可愛いなと思ってさー。…見せてやんねえからな」


子供じみた独占欲で懐に手紙を直すとサンドウィッチにぱくりと食いついてリロイを手でしっしと振って追い払った。


「早くチビの部屋の前で立ってろ。2日間はチビから離れるな」


「…分かった」


――リロイが去ると、森を舞う精霊たちを見上げながらまた手紙を取り出して、にやにやし始めた。


“早くコーに会いたい”


感情はないながらもそう思ってくれるラスに愛しさを感じて、筆跡を指で辿りながら唇を鳴らしてリップ音を響かせた。


「後でたーっぷり可愛がってやるからな。それまでは我慢してろよ」


妄想を始めた魔王の表情がみるみるとろけていって、シルフィードとウンディーネが口を揃えて言った。


『キモい』


「うるせえな、お前たちも可愛がってやろうか?」


『きゃあ、ヘンタイ!』


…精霊からも“ヘンタイ”と言われてしまう魔王だった。
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