魔王と王女の物語
魔王の精神力は底無しなのか――

森の再生をはじめてから2日が経ち、ラスの傍には常にグラースとリロイ、

そして同じ部屋にはティアラが居て、女王から襲われないようにラスを警護していた。


「私は大丈夫なの。だからコーを見に行きたいの」


「駄目よラス。外には出ないで」


いつも元気なラスのグリーンの瞳には何の感情の色もなく、

まるで今にも動きだしそうなビスクドールのようで、ティアラは何度もラスの手を触って体温を確かめたり、一緒に眠ったり…その存在を確かめる。


「魔王は意外と優しいのね。あなたのためにもう2日も寝てないし、精霊を召喚しっぱなしで体力も気力も尽きかけているはずよ」


「だからコーに会いたいの。バルコニーから見るだけだから…ティアラ…」


粘り強くティアラを説得し、根負けしたティアラはラスの手を引いて外に出ると、何も言ってないのにグラースとリロイが理解したように頷いて、皆で2階のバルコニーに出た。


――その時コハクは欠伸をしていて、驚異的なスピードで再生をしている森を満足げに眺めていた。


「よしよし、順調だな」


「必死ね。以前ここへ居た時のあなたと違うわ」


…今最も聞きたくない者から声をかけられて、舌打ちをしながらコハクが振り返る。


そこには偉そうに腕を組んで悠々と近付いて来る女王の姿が在って、隣に立つと同じように森を見上げた。


「四精霊をこんなに簡単に召喚するなんてさすがだわ」


「明日はここを出て行く。それまでに森を直すから、お前はチビの呪いを解け。そう約束したんだからな」


――その時女王の耳に、バルコニーに出て来たラスたちの声が聴こえて、

どうしても嫌がらせをせずにはいられない女王は腕を上げてコハクの肩に触れるとこちらに視線を向けさせて、


コハクの首に腕を回して無理矢理下げさせると…情熱的にコハクの唇を奪った。


「!」


「ふふ…見てるわよ」


唇を拭いながら女王を突き飛ばしてバルコニーに目を遣るとラスがこちらを見つめていて…


目が合うと、ふいっと身を翻して室内へと戻って行った。


「てめえ…」


女王は楽しそうに笑いながら去って行った。
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