魔王と王女の物語
朝、乱反射する光がまぶたにあたって眩しくて、ラスは目を覚ました。


「ん…」


瞳を開けると、天井にはまるで泉があるように光がゆらゆらと揺れていて、

隣で眠っているティアラを起こさないようにそっとベッドを抜け出て窓辺に立つと…そこからは、光輝く美しい森がラスを待っていた。


「わ…、すごい…」


――感情があったならば、それを顔に出して外を駆け回っただろう。

だがそうすることもできずにそっとドアを開けてみると、さすがにリロイとグラースは居なかった。


そして一番奥の玉座の間の扉が開いていて、その部屋にむやみに入ったからこんな呪いをかけられたのに、ラスはそれを悔やみもせずに扉に近づく。


…そして、コハクを見つけた。


「…コー…」


雨に濡れたマントを脱ぎ、細いラインの腰に手をあてて、円状の花に囲まれた椅子のない玉座に座っている女王と話をしていて、息を潜めて会話を盗み聞きした。


「森を見たか?ちゃんと元に戻したぜ。だからチビを…」


「最後に私を抱きなさい。それで全て無かったことにしてあげる」


「はあ?ふざけんなよ誰がお前みたいな高慢ちきな女を抱くもんか」


――女王とコハクがにらみ合い、

会話の内容はいまいち理解ができなくても、2人が過去に何か特別な関係であったことを読み取ったラスが後ずさりすると、


廊下に落ちていた花をかさりと踏んでしまい…コハクがこちらを見た。


「チビ…」


「私…部屋に戻ってるね」


「こっち来いよ、お前の呪いを解いて…」


「いいの。女王様と何かするんでしょ?部屋に戻ってるから」


背を向けて逃げ出そうとしたラスを、駆け寄ったコハクが背中からぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。


「後で話してやる。だから先に呪いを解いてもらおう。いいな?」


「…うん」


いつものようにコハクに抱っこされて女王の前へと連れ出されると、また敵意むき出しの尖った瞳で睨まれた。


「お前が私のコハクを骨抜きにしたせいで…」


「誰がお前のだよ、チビが誤解するようなことを言うなよな」


にらみ合っていると、部屋にシルフィードが入ってきた。
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