魔王と王女の物語
数時間ゆっくりと眠り、ラスが起きた時はコハクは身支度を終えていた。


「もう昼だぞ。あーよく寝た!チビも眠れたか?」


「うん!」


妖精が運んでくれた朝露で顔を洗い、コハクがラスの金の髪を梳かしてやって外に出ると、リロイとグラースが部屋の前で番をしていた。


「ご苦労ご苦労。俺が治した森を見たか?」


「ああ、とても綺麗だ。だが女王がすごく怒ってる。早く発とう」


グラースがそう言ってラスに笑いかけ、同じ髪と瞳の色をしているせいかまるで妹のように感じてしまって肩を抱いた。


「私の二の舞になるんじゃないかと思ってすごく心配した」


「ごめんね、でもコーが治してくれたから」


「そうそう、俺はチビの“勇者様”だからさ」


リロイから睨まれたが、1人で螺旋階段を下りて行きながらラスに笑いかけた。


「先に準備してるから。ティアラ王女は隣の部屋に居るよ」


「うん、わかった。ティアラー」


ラスがティアラを呼びに行っている間、コハクはすっとグラースに近付き、親指で耳たぶをくすぐった。


「で?お前は何者だ?俺もあの国は行ったことがねえんだ」


「…行けばわかる。…恩があるから連れて行ってやる」


高飛車な態度だが、女王のように鼻につくものではなく、

魔王の指を払いのけると1階へ降りて行ってしまい、戻って来たラスを抱っこするとティアラがじっと見上げてきていて、にやっと笑った。


「なんだよ見惚れんなよな、俺はチビのものだからー」


「誰がお前なんかに見惚れるものですか。だけど…ラスを元気にしてくれたことだけは感謝しておくわ」


「ティアラ…ありがとう。でもコーのこと…できたら悪く言わないでね」


――またラスと魔王の距離が縮まった気がして、なお危機感が募ったティアラだったが…グラースが昨晩言った言葉が頭をよぎった。


『俺が死ぬも生かすもチビに任せる』


確かに魔王がそう言ったと聞いて、リロイと顔を見合わせたものだ。


この男、本気でラスのことを愛している。


そんな2人を引き裂けるだろうか?


そんな権利が自分たちにあるだろうか?


…無いに決まっている。
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