魔王と王女の物語
「ねえコー、さっきの魔法みたいだったね」


『だって俺魔法使いだもん。元の身体に戻れたらもっと使えるんだけどなー』


「昔は魔法使いって沢山居たんでしょ?」


母親のソフィーの部屋に向かいながら影のコハクに話しかけると、珍しく少し黙り込んだ。


『突然みんな力が使えなくなったんだ。原因はわかってるんだけどさ』


「へえ、そうなの?聞いてもいい?」


珍しく気を使ってきたので、苦笑気味の声でコハクが返した。


『別に知らなくていい話だし。それよか母ちゃんの所に行くんだろ?早く行けって」


「うん」


――ソフィーの部屋の前に着くとノックして中に入り、

ちょうど夜に催されるパーティーのための新しいドレスを試着していた優しい母の腕にまとわりついた。


「お母様、すごく綺麗!」


「ふふ、ありがとう。じゃあみんな、少し席を外してくれる?」


使用人たちを部屋の外に出して、ソフィーがラスを椅子に座らせると、

クローゼットから革製のジュエリーケースを出してラスに手渡した。


「これは私とお父様からのプレゼントよ。16歳の誕生日、おめでとう」


「わあ、ありがとう!」


ジュエリーケースを開けてみると…


プラチナのチェーンの先端に、

ゴールドストーンらしき石を小さくカットしたトップがついていた。


石からは不思議なパワーを感じ、ソフィーが背中側に回って首につけてくれた。


「よく似合うわ。ラス…大切にしてね?」


何故か涙ぐんだ母に抱きついて喜びをいっぱいに表すと背中を撫でてくれて、めいっぱい甘えて手を振った。


「お父様が新しいドレスを贈ってくれたの。きっとこのネックレスに合うと思うの。お母様、また夜会おうね」


「ふふふ、お転婆は控えるのよ」


しとやかな笑顔で手を振られると胸がふんわり温かくなって、影のコハクに満面の笑みで話しかけた。


「お母様って綺麗だよね。憧れるなー」


『そっか?俺はチビのがコーフンするけど』


「こーふん?」


くつくつとコハクが笑う。

足早に部屋に戻ると鏡の前に立ち、小1時間もの間綺麗なネックレスを見つめていた。
< 22 / 392 >

この作品をシェア

pagetop