魔王と王女の物語
いつもの日課として昼寝をしようと思ったのだが、興奮したラスは全く眠れず、

夕暮れが近付いて来ると使用人に促されて浴室に向かった。



『チビ、ぴかぴかにしろよ。今日は特別な夜になるんだからさ』


「え?なんで?」


『そりゃあ…大人になるんだろ?俺がきっちり大人の女にしてやるからさ』


「ふうん?」


――そう言いながら普段着のお気に入りのドレスを脱いで、下着を脱いで…


もちろんその間もコハクは影のまま一部始終余すことなく眺めつつ、脱衣所を出て中に入ろうとするラスに冗談半分に話しかける。


『王女様、お背中お流ししましょうか?』


「え?いいの?ありがとう」


『え?いいのか!?やった!』


急いでラスの影から現した姿はすでに腕捲りに裾も捲ってあり、全裸のラスがタオルを手渡してきた。


「はい、これ」


「あのさ…“恥ずかしいっ”とか“見ないでっ”とかは言わねえわけ?」


「なんで?」


「…まあいいや」


――ぽりぽりと頬をかくと石鹸をつけて泡立てて、しなやかで白い背中を擦った。


「気持ちいー!」


「これからは毎日擦ってやろうか?」


「うん!」


肩越しに振り返ったラスの瞳は純粋に嬉しそうで、、

脇からちらっと見える胸やうなじに大コーフンした魔王はラスの頬を舐めた。



「くすぐったいよ!」


「美味しそうだなあ。なあ、今すぐ食っていい?」



ラスを押し倒すと、コハクの視界には夢のような光景が展開された。



「マジやべえ!」


「食べるってなにを?」



…相変らず気を削ぐようなことを言われ、しかも顔は例のきょとん顔だ。


コハクは赤い瞳をがっかりな光で満たすと、今度は絶対に“何したの?”と言わせないためにも…


ラスの唇をこの時はじめて、奪った。



「ん、んん!?」


「…どうよ、これで俺が何を食べたいかわかったか?」



――だが…


ラスは身体を起こすと自身の唇を撫でて、言ってのけた。



「コー、どうして今口と口をくっつけたの?」



…衝撃。
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