魔王と王女の物語
その頃ラスは…森の中で、真っ白なウサギを追いかけていた。


「ウサギさん、待って!」


「こっちだよ!」


…喋るウサギだ。

この時点で明らかにおかしいのだが、動物が大好きなラスは夢中になって追いかけ続けるとすぐに息切れがしてしまってその場に座り込んだ。


「お嬢さん、こっちこっち」


「ちょ、ちょっと待って…、息が…」


するとウサギがちょっと近付いて来るとラスの息が整うまで待って、またぴょんぴょんと走り出した。


「ウサギさん、どこに行くの?」


「僕のお家だよ。ちょっと一休みして行きなよ」


「仲間が居るの。呼んできてもいい?」


「駄目、僕のお家は小さいから君しか入れないから」


――前に視線を戻しながらウサギはにやりと笑い、

休憩していたラスを偶然見かけて一目ぼれしてしまい、お嫁さんにしてやろうと考えたウサギは可愛い仕草でラスを森の中へ誘い込み、家へ連れ込もうとしていた。


…もちろん魔物だ。


こんなに簡単に引っかかってくれるとは思わなかったが、可愛い外見に似合わず、頭の中は魔王ばりのとんでもない色ぼけな妄想で満ち溢れていた。


「こっちこっち」


「ま、待って」


「おいそこのウサギ。俺の天使ちゃんをどうするつもりなんだよ」


「ぎゃっ」


長い両耳をひと掴みにされて持ち上げられて、恐る恐る視線を上げると…


真っ黒でいて、自分と同じ赤い瞳をした男が凶悪な笑顔を浮かべていた。


「ひぃっ」


「チビ、お前…そろそろ懲りろよな。こいつはなあ、お前を花嫁にしてあわよくばガキを生ませようとしてたんだぞ」


「え、そうなの?」


きょとんとしたラスに盛大なため息をつき、ウサギの魔物を目線まで持ち上げると、右の掌に炎を生み出した。


「俺、肉食いたかったんだよなー」


「ぼ、僕は美味しくないよ!もうしないからごめんなさい、離して!」


「コー、可哀そうだよ。私なんにもされてないから離してあげて」


「てめえ…俺より先にチビにガキ生ませようなんざ1000年はええ!」


そしてその後ラスは…魔王から延々と説教を食らった。
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