魔王と王女の物語
ラスがパーティー会場に現れると…


あちこちからため息が漏れて、有名な家の出自の者や小国、大国の王子たちがにじり寄って来る。


「ラス王女、これはお美しい…!」


「ぜひ僕と一曲踊って下さい!」


「えっと…」



本来人見知りではないのだが、コハクから“知らない人とは話しちゃ駄目だ”と言われ、

そして白騎士団の騎士としてラスの傍にぴったりと寄り添っているリロイの迫力も相成って、


一同はラスに触れたくても触れられない状態に陥り、少しでも近寄ろうと押し合いへし合いをしていた。


「プリンセス、こっちだよ」


父の声がして背伸びをして声のする方を見ると、

カイが手を振っていて、人ごみをかき分けながら駆け寄って抱き着いた。


「こんな立派なお誕生日パーティーを開いてくれてありがとう!」


「大人になったお祝いだよ」


…やっぱり誰よりもかっこいい。

まだ30代後半の若々しい父から頬にキスを贈られると、脇に控えていた十数名の音楽隊が一斉に楽器をかき鳴らした。


「最初はお父様と踊ろうプリンセス」


――ラスとカイがダンスを踊っているのを、ボーイが持ってきた酒の入ったグラスを傾けながら酒の肴にしてコハクが眺めていて、

そうしているうちに小さな小競り合いが起き始めていた。


「次は俺だ!」


「いや、私だ!」


――超やきもち妬きな魔王はそんな会話をイライラしながら聞いていたが、

曲が終わる直前ラスと目が合い、口をぱくぱくと開けてジェスチャーをしてくる。


“一緒に踊ろ”


肩を竦めると、曲が終わった瞬間暗いバルコニーに出てきて、手の甲をを差し出してきた。


また苦笑しながらコハクが片膝をついてその手を取り、甲にキスをして立ち上がると腰を抱いた。


「泣き言言うんじゃねえぞ」


「え?きゃ!」


コハクがぱちんと耳元で指を鳴らすと、驚いたことに自分だけに音楽が聴こえて、


アップテンポの曲に合わせてコハクがラスの身体をくるくる回した。


「コー、早いよ!でも楽しい!」


「まだまだ!」


目の端で、リロイがため息をついているのが見えた。
< 26 / 392 >

この作品をシェア

pagetop