魔王と王女の物語
「あ、コー!スノウさんがね、居なくなっちゃったの。どこかで会わなかった?」


「あー、なんかひとりであっちの方歩いてたぜ」


「スノウ!」


それを聞いた途端、ひとつにくくった長く黒い髪を揺らめかせながら王子が猛ダッシュして居なくなり、その後を7人の小人が追う。


その後ろ姿にラスが呑気にも手を振って、“この天然王女め”とコハクが呟き、ラスの身体を抱き上げて、白い頬にちゅっとキスをすると、

殺気だったリロイが気色ばんでコハクの腕を掴んで捩じり、ラスを奪い返して地面に脚をつけさせた。


「わ、びっくりした…」


「ラス王女に何をする、このまお………」


そこで何とか言葉を呑み込んだのは、


ラスが“魔王憑きの王女”だという事実を明るみに出したくなかったから。


――にやにや笑ってまたラスの白い手を取ると手の甲にキスをしてリロイを怒らせながら、

当のラスは今日1日を通してコハクがべたべた触りまくっていることも別に気にならず、また気にかけたこともなく、


リロイの純白のマントを引っ張ると部屋の中を指さした。



「リロイ、中に行こ。コー、影に戻る?そこに居る?」


「ここに居るよ。お前もたまには俺から離れたいだろ?」


「え?そう?そんなこと思ったことないけど…じゃあまた後でね」



…なんとも嬉しいことを言ってくれる。


ラスが1つ1つ歳を重ねていく度に指折り数えてラスを手に入れる日を手ぐすね引いて待っていたが…


そんな日々も今日で終わりだ!


くつくつと喉で笑って楽器の演奏に乗せてカイと踊り始めたラスを眺めていると…


スノウたちが消えていった右手側から、王子とスノウ、7人の小人が戻って来るのが見えた。



「今夜は9人で朝まで頑張るのか?いいねえ、俺も誘ってもらいたいよ」


「コハク様なら大歓迎ですわ。ねえ王子?」


王子の顔色が一瞬変わったが、コハクは見て見ぬふりをしながら欠伸をして背中を向けながら手を振った。


「じゃあ気が向いたら部屋を訪ねる。…腰砕けになるぜ」


スノウがぞくりと背筋を震わせた。

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