魔王と王女の物語
馬車で旅をしている間は1日に数度魔物の襲撃に遭ったのだが…

グリーンリバーを出てからは1度も遭遇せず、ラスは自分の膝枕でうっとりしているコハクの髪を撫でた。


「コー、魔物が全然出て来ないね。嬉しいけどどうして?」


「さあ。いいじゃん、魔物怖いんだろ?」


ラスは何度か瞬きをして少し考えると曖昧に頷きながらもその後首を振った。


「グリーンリバーの魔物さんたちは大好きだよ。気さくだし優しいし力持ちだし」


「俺だって気さくだし優しいし力持ちだし、何よりかっこいい!チビ、そうだろ?」


――ティアラはリロイを案じて馬車から降り、騎乗の人になっていた。


とことん鈍感な王女は嬉しそうに笑いながら身体を起こしてぎゅっと抱きしめてきたコハクの背中を撫でて吐息をついた。


「リロイとティアラが結婚したら、リロイはレッドストーン王国の王様になるんだよね?うん、リロイなら王様になれるよきっと。かっこいいし優しいし紳士だから」


「俺だってかっこいいし!優しいし!超紳士だし!」


とことん対抗したがるコハクは子供のように唇を尖らせてラスの太股やお尻を撫でまくりながら窓に目を遣った。


「噴水のある街で1泊したら俺の城だ。今思えばあんなとこにチビを住まわせるわけにはいかねえもんな。あっちを実験場にすっかな」


「コーの眼鏡姿見たいっ」


ラスがおねだりをすると待ち構えていたかのように懐から縁なしの眼鏡がにゅっと出てきた。


「見たいかね」


「見たいっ。雰囲気変わるしすごく頭がよさそうに見えるよ」


「普段俺が頭が悪そうな言い方すんなよな。ほら」


――大好きな赤い瞳は少しだけ見えにくくなるけれど、眼鏡をかけているコハクの眼差しはいっそう優しく感じる。


ワルぶっていても、この人が私の“勇者様”。


「ねえコー、またお尻ふりふりしてあげよっか」


「駄目!俺が爆発すっから!」


「爆発ってどこが?」


「秘密ー。すぐわかるって」


――邪魔者も居ないことだし。


心のこもったキスをすると、ラスを強く抱きしめた。


心も身体も、もうすぐ全て自分のものに――


★★

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