魔王と王女の物語
“なんとかする”と言ってもらえたラスはものすごくほっとして、頼れる愛しい男の背中に抱き着いた。


「コー、ありがとう。私はコーのお嫁さんになるんだからリロイのことは気にしないでね」


「つってもお前ちょっと前に小僧にキスされたりしてたじゃんかよ。俺に内緒で。……あぁイライラしてきた!」


子供っぽい魔王が胸に抱きしめた枕をリロイに見立てて拳で殴りつけていると、ラスはマントを脱いだコハクの肩甲骨にキスをした。


「んんっ!?ち、チビ、今のよかった!もっと!」


「いっぱいしてあげるから怒らないで。あの時は何も知らなかったの。キスをするのはコーだけだよ。明日はもうお城でしょ?コーは私になんでもしていいんだよ」


ぴくりと身体が動き、コハクが振り返る。


魔王、果てしなく有頂天。


「…好きに?」


「うん、好きに」


「なんでも?」


「うん、なんでも」


常にアドレナリンが放出し続けている魔王の脳内妄想劇場はさらに活性化され、ぱかっと口が開いた。


「ほ、ほんとだな?」


「うん。でも優しくしてくれるんでしょ?」


ラスの大きなグリーンの瞳は何も疑っていない。

こうしてラスに見つめられて、ラスの瞳に自分だけ映ることが嬉しくて。


かつてはリロイに“ロリコンなのか?”と全殺しものの質問を浴びせられたこともあったが、そんなことは気にしない。


――コハクは寝返りを打つと細いラスの身体を抱きしめて鼻をつまんだ。


「いひゃいよ」


「ロリ上等!俺はチビだからチビを好きになったの!」


…なんだか犯罪者まがいのことを口にしながらも、“好き”と言われたラスは嬉しそうな顔をしてコハクの胸に頬ずりをした。


「“好き”よりもっと上なんでしょ?」


「ああもちろん。明日は…チビが俺のものになるのかあ。……イメトレしとかなきゃ!」


「?ねえコー、本当にリロイにはひどいことしないでね。お願い」


「またあいつの話かよ。…何もかも終わったら…チビ…俺を全部受け入れてくれ」


暗闇にコハクの赤い瞳が宝石のように輝やいた。


もう全て受け入れている。

全部、全部。
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