魔王と王女の物語
その頃リロイはまだラスの血だまりの前で立ち尽くしていた。
ティアラもグラースも…声をかけることができずにただ傍にいる。
リロイにとってのラスは生涯守ってゆくべき存在。
大切で愛しくて仕方のないラスを傷つけたのだからその心情には計り知れないものがある。
「僕が……ラスを…」
「死んでない。魔王が治療したから今頃目覚めているかもしれないぞ」
ラスが飛び出てくるなんて…
誰もが想像できなかったことだったので、誰もが動くことができなかったけれど…
リロイの消沈ぶりは見るに堪えないものがある。
…顔は真っ青になり、瞬きを忘れてしまったかのようにしてラスの血だまりをずっとずっと見つめ続けて数時間――
そしてとうとうティアラが動いた。
「リロイ」
美しい金の髪で表情の見えないリロイの手を引っ張ると、2階へと促そうとした。
「ラスに会いに行きましょう」
「…無理です。僕は…ラスに合せる顔がない」
「ラスはきっと気にしていません。あの性格なのですからあなたを恨んだり怒ったりは絶対していませんよ」
グラースがふっと笑い、リロイは少しだけ顔を上げてコハクの身体が眠っているという棺に目を遣った。
そこには守るようにして棺に抱き着いている黒妖精…ベルルが居た。
目が合うと牙をむき出してきて威嚇してくる。
「…ラスは…元気でしょうか」
「それを確認しに行くんです。リロイ…あなたはラスの白騎士でしょう!?情けないわ、しっかりして!」
「!ティアラ…」
――大きな黒瞳から今にも涙が零れ落ちそうなほどに涙を溜めたティアラの悲鳴のような絶叫が、木霊した。
…こんなに好いてくれているのに…
魂は今もラスにがんじがらめにされたまま。
「行きましょう。…大きな声を出してごめんなさい」
「…僕の方こそ申し訳ありません。ティアラ…ありがとう」
大きく深呼吸をして、ティアラの手を取った。
すると、空いている左手をグラースが握ってきた。
「グラース…」
「行こう」
愛しの王女の元へ――
ティアラもグラースも…声をかけることができずにただ傍にいる。
リロイにとってのラスは生涯守ってゆくべき存在。
大切で愛しくて仕方のないラスを傷つけたのだからその心情には計り知れないものがある。
「僕が……ラスを…」
「死んでない。魔王が治療したから今頃目覚めているかもしれないぞ」
ラスが飛び出てくるなんて…
誰もが想像できなかったことだったので、誰もが動くことができなかったけれど…
リロイの消沈ぶりは見るに堪えないものがある。
…顔は真っ青になり、瞬きを忘れてしまったかのようにしてラスの血だまりをずっとずっと見つめ続けて数時間――
そしてとうとうティアラが動いた。
「リロイ」
美しい金の髪で表情の見えないリロイの手を引っ張ると、2階へと促そうとした。
「ラスに会いに行きましょう」
「…無理です。僕は…ラスに合せる顔がない」
「ラスはきっと気にしていません。あの性格なのですからあなたを恨んだり怒ったりは絶対していませんよ」
グラースがふっと笑い、リロイは少しだけ顔を上げてコハクの身体が眠っているという棺に目を遣った。
そこには守るようにして棺に抱き着いている黒妖精…ベルルが居た。
目が合うと牙をむき出してきて威嚇してくる。
「…ラスは…元気でしょうか」
「それを確認しに行くんです。リロイ…あなたはラスの白騎士でしょう!?情けないわ、しっかりして!」
「!ティアラ…」
――大きな黒瞳から今にも涙が零れ落ちそうなほどに涙を溜めたティアラの悲鳴のような絶叫が、木霊した。
…こんなに好いてくれているのに…
魂は今もラスにがんじがらめにされたまま。
「行きましょう。…大きな声を出してごめんなさい」
「…僕の方こそ申し訳ありません。ティアラ…ありがとう」
大きく深呼吸をして、ティアラの手を取った。
すると、空いている左手をグラースが握ってきた。
「グラース…」
「行こう」
愛しの王女の元へ――