魔王と王女の物語
部屋のドアがノックされた時――


魔王は盛大な舌打ちを打った。


「ちっ、俺とチビがいちゃいちゃしてる邪魔しやがって」


「ん…、コー、誰か…来たの…?」


腕枕をして思う存分ラスの寝顔を楽しんでいた時、ラスが欠伸をしながら瞳を擦った。


「ああ、小僧たちが来たみたいだぜ。チビはそのまま寝てろよ」


唇に小さなキスをするとベッドから這い出てドアを開けた。


「……魔王」


「謝りに来たのか?てめえどの面下げて…」


「コー、喧嘩は駄目」


ラスに止められてぐっと黙り込むと、動揺に瞳を揺らしっぱなしのリロイの腕を組んだティアラが強引に部屋の中へと連れ込んだ。


「魔王、お邪魔するわ」


「チビの顔色がまだ悪い。興奮させんなよ」


――相変わらずラスに対しては超べた甘のコハクから激しく見下ろされながら注意されたティアラは鼻を鳴らした。


「興奮してるのはお前でしょ」


「ああ?言うようになったじゃねえか、痛い目に遭わせ……あーもう小僧に遭わされたかあ。残念残念」


…さらに相変らず性格が最高に悪く、またラス一筋になった魔王が他の女に目もくれていないことを知っているので、言い返さなかった。


「ティアラ!グラース!…リロイ!!」


3人が姿を見せるとラスがむくりと身体を起こして満面の笑顔で出迎えてくれた。


1番ほっとしたのは…もちろんリロイだ。


今にも泣きそうに表情を歪め、ベッドサイドで片膝を折ると伸ばしてきたラスの手を握って額に当てると…俯いた。


「ラス…」


「私は元気だからそんな顔しないで。ね?リロイは笑ってる顔がすっごくいいんだから笑って?」


労わってくれるラス。

あの血だまりの量からして身体の半分は血液が失われていたかもしれないのに、厭わずに今も慕ってくれるラス。


――リロイは無理矢理笑顔を作ると、剣が潜り込んだ胸元に視線を遣った。


「…傷は?」


「ないよ、コーが治してくれたから。あ、見る?」


「こらー、チビ!俺以外の男に肌を見せちゃいけません!」


相変らずのやきもち。

面々は苦笑に包まれた。

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