魔王と王女の物語
「ラス、ちょっといいかな」


コハクがにやにやしながら見守る中着替えを終えて、

ちょうど部屋を出ようとするとリロイが来てくれたので、ドアを開けて抱き着きながら朝の挨拶を交わす。


「おはよう!昨夜は楽しかったね!」


「ら、ラス…おはよう。もう大人なんだからその…あまり抱き着いたりしない方が…」


「そうそう、抱き着いたりしちゃ駄目だぞチビ。そいつが魔獣になるからさ」


「?魔獣?」


「へ、陛下がお呼びだから一緒に行こう。さあ、手を」


「うん」


焦ったリロイがコハクを睨み、ラスが自分の影を指さして大きなコハクを見上げた。


「コー、戻って。お父様と会いたくないんでしょ?」


「ああ、まあな。じゃ、仕方ないか」


とぷんと影に沈んだコハクを確認し、子供の時はあまり一緒に遊べなかったリロイが傍に居てくれるので嬉しくなったラスは頼もしくなったリロイの白銀の鎧を突いた。


「かっこよくなったね。そんな顔だった?ちょっとよく見せて?」


「え?あ、わ…っ」


急に立ち止まって背伸びをし、リロイの頬を両手で挟んでじっと見上げてきたラスに、リロイの心臓が壊れそうなほどに高鳴る。


「やっぱり昔と違う…。ねえ、もっとよく見せ…」


『チービー、ベタベタすんなって。後で好きなだけ俺を触っていいからさ』


「なんでコーを触らなきゃいけないの?ねえ、お父様は私に何の用なのかなあ?」


水色のマーメイドドレスが細い身体のラインにぴったり合って、

ちょっぴり見える胸の谷間に動揺しながらも、リロイは何とか理性を繋ぎ止めて口ごもる。


「えっと…とっても大切なことだよ。僕はもう先に聞いてるけど…必ず君を守ってみせるから。約束するよ」


「?」


――ぽかんとした顔で見上げてくる純真無垢な王女。


このまま“魔王憑きの王女”として城に閉じこめておくわけにはいかない。


だから、カイとソフィーは大きな決断をした。


ラスは選択しなければならない。


『とうとうか』


「影、勝手に喋るな。ラス、急ごう」


「え、うん」


魔王の呪縛から解き放つために――

< 37 / 392 >

この作品をシェア

pagetop