魔王と王女の物語
クリスタルのシャンデリアが燦然と煌めく大広間に行くと…


父のカイが、母のソフィーを膝に座らせて掌にキスをして、2人でくすくす笑っている姿を見て、ラスの脚が止まった。


「うわあ…リロイ…な、なんか恥ずかしくなっちゃうね…」


「ラスのご両親は美男美女だから見てる方が恥ずかしくなるね」


『チビ、俺とお前もはたから見るとあんな感じだぜ』


「え?コーは真っ黒でしょ?お父様とお母様は金の髪だしすっごく綺麗」


『…』


また愛の囁きが通じずに影が沈黙し、リロイがほくそ笑んでいると、
熱心に見つめているラスの視線に気が付き、ソフィーが慌てて膝から降りた。


「いらっしゃいな」


呼び寄せられて少し頬が赤いソフィーの胸に抱き着くと良い匂いがして、

リロイが上座の前で片膝をつくと左胸に手をあて、忠誠心を表す。


「ラス…君に大切な話があるんだ」


「?…どうしたの?お話ってなあに?」


カイが厳しい顔つきで影を見つめているので、ラスは自分の影に向けて手を差し伸べる。


すると…ずず、と影からコハクが出てきて、赤い瞳に愉悦の光を揺らめかせながらその白い腕を取って笑った。


「コー…?お父様…?」


「ラス…君は16歳になったよね?君の影に憑いているコハクはとっても悪い奴なんだ。だから君の影から切り離さなければいけないんだよ」


「決めつけるのは良くないぜ。チビ、信じるんじゃないぞ」


――ソフィーはコハクを見ようともしないし、

リロイはさっきからずっとコハクを睨んでいて、さすがのラスも空気が険悪なことに気が付き、俯いた。


「コーは…悪くないもん」


「お父様はね、君の影からコハクに出て行ってもらいたいんだよ。そうじゃないと、君が憧れている“勇者様”と出会って結婚することもできないよ?」


「え!?やだ、やだよ!」


憧れの勇者様――


お父様とお母様のように運命的に出会って恋に落ちて、結婚して…


「だから旅に出なさい。リロイも一緒だから、心配ないからね」


「旅?外に出れるの!?」


不安がると思いきや飛び跳ねて喜んだラス。


またコハクが笑った。
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