魔王と王女の物語
グラースとしばらく飲んだ後、酒が入ると少しおしゃべりになるこの王女に乗せられたリロイは…

隣のティアラの部屋のドアをノックした。


「ティアラ…起きていますか?」


「…」


中から返事はなく、恐る恐るドアノブを回してみると…鍵はかけられていなかった。


「不用心だな…」


これが自分ではなくて魔王だったらと思うとぞっとする。

ドアを閉めずに開けたまま中へ入ると、ティアラはベッドで熟睡していた。


…疲れただろう。

聖歌に魔法。

そして道中ずっと励まし続けてくれた。

水晶のパワーを魔法剣に、と嫌がるティアラを説得したあの時のこと――


ティアラの好意を逆手に取ったあの行為…


「僕は…白くなんかない。白騎士なんかじゃ…」


ぎし、と音を立ててベッドに座ると…

眠っていたはずのティアラが手を伸ばして膝に触れてきた。


「リロイ…」


「申しわけありません、起こしてしまいましたね」


――目の下にはくまができていた。

いつもは薄化粧をしているティアラはベッドに倒れ込む前に化粧だけはと思って顔を洗っていたので、リロイの視線に気付いて布団を被った。


「私…酷い顔をしてましたか?」


「いいえ。でも疲れた顔をしています。あなたが1番疲れたでしょう。少し顔が見たくて来てしまいました。ゆっくり眠って下さい」


ティアラがそろりと顔を出した。

黒瞳は疲れた色を湛えながらも美しく、ラスの次に好きな女性だという自覚もある。


…ティアラは王女だ。

いずれはレッドストーン王国を継ぎ、ティアラの夫が国王となる。


これから王国に戻るまでが最後の別れとなるかもしれない。

どうしようか。

ラスの居ないゴールドストーン王国に残っていても意味はあるのだろうか?


「リロイ…あなたの気持ちが叶わなかったのは残念ですが、あなたならすぐに素敵な女性と巡り合えます」


「ありがとうございます。あなたにもきっとすぐ…」


見つめ合い、膝の上で手を握り合った。

どんどん心が落ち着いてゆく。

どんどん――

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