魔王と王女の物語
言われた通り身体をぴかぴかにすべく丁寧に身体を擦ったラスがバスルームから出ると、テーブルにはほかほかの食事が並べられていた。


「だからこんなに食べれないってば」


「いいから食えって。チビ、まだふらふらするか?」


水滴の滴る金の髪にタオルを挟んでぽんぽんと叩いて水分を飛ばしてくれる甲斐甲斐しい魔王。

ラスにとってはいつもの光景でもあったのだが、何故か少しだけ気恥ずかしくて一緒に席につきながら野菜を食べた。


「もうしないよ。ねえコー、これ食べたら棺のとこ行こうね。妖精さんがずっと守ってくれてるんでしょ?」


「ああそうだな。ベルルかー、あいつそろそろ妖精の森に戻ったらいいのにな」


――コハクとリロイが戦っていた時確かにコハクに対しての愛の告白を聴いた。

コハクが自分の影になる前は、この2人は恋人関係だったのだろうか。

ローズマリーの次は、あの黒妖精に癒されていたのだろうか?


「コーは…妖精さんのこと好き?」


問うと少し間を置いて返ってきた答えは…


「まあな。なんでも言うこと聞くし。…なんだ?やきもちか?可愛いんだよ!」


ぷくっと膨らんだ頬を指で突かれて破裂させると早々に食事を切り上げたコハクは少し長い後ろ髪をゴムで縛り、ラスを抱き上げた。


「もう行こうぜ。早く元の身体に戻りたいんだ」


「うん、じゃあ行こ。ドキドキするね」


「今の俺はぶっちゃけ空っぽみたいなもんだからさ。本当の俺を見たらびっくりするぞー。かっこいいぞー。びっくりさせてやる!」


今でも十分かっこいいのだが…

それに気付いたのもつい最近のことだったので、螺旋階段を下りながら緊張感が高まってきたラスはコハクの耳を引っ張った。


「どうしよ。どうしたらいいの?私は棺を開けるだけでいいの?」


「ああ。カイの子供以外は俺の棺を開けることはできねえ。つまりチビだけってことだ」


「うん、わかった。緊張してきた…」


――先ほど戦っていた教会風の大きな部屋に着いた。

棺の前にはベルルが居てコハクの姿を見止めるとぱっと顔を輝かせた。


「コハク様!」


「さーて。いよいよだな」


元の自分に――
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