魔王と王女の物語
蓋を閉じられた棺の中は真っ暗で、

しかもいつもよりもコハクの身体の重みをリアルに感じることができた。


固くて重たくて…

暗闇の中ながらも、今コハクの身体に触れている場所は恐らく胸だろう。


「コー、何も見えないよ…。本当にコーなの…?」


「もっとよく見たいか?仕方ねえなあ」


ぱちんと指が鳴る音がしたと思ったら棺の中はほんのり明るくなり、覆い被さっているコハクの秀麗な美貌が鼻先が触れそうな位置にあった。


…血の通ったあたたかな頬を撫でるとその手を取られ、口元に持っていかれて指先にキスをされた。


「やっと戻れた。ずっとこの日を待ってたんだ。チビ…お前とここに帰ってくる日をずっと待ってた」


「コー…もう私の影には居ないの?呼んでもすぐに来てくれないの…?」


ラスが泣きそうな声を上げると、コハクはラスの細い腰に腕を回してきつく抱きしめると首を振った。


「ずっと傍にいる。チビの影の中に居た時よりもずっとだ。いやっつっても絶対そうするからな。チビ…」


――頬に沢山キスをされて、それがどんどん唇に近付いてきて…


そして重なった唇の感触はやはりいつもとは違い、ラスの身体を跳ねさせた。


「ん…っ」


絡まる舌の感触はとろけるようでいて甘く、音が鳴り、ラスの息もすぐに上がった。


「どうだ、いつもと違うだろ?」


「…うん、違う。コー…本当に元の身体に戻ったんだね。おめでとうコー。呪いが解けて良かったね」


唇が離れると目を合わせ、微笑みかけてくれたコハクの美貌はいつもよりも綺麗で、思いきり意識してしまったラスはまた胸を押した。


「コー、出なきゃ。みんなでお祝いしよ!ティアラとグラースとリロイを呼んで…」


「それよかチビ…ちょっとしてみたいことがあるんだけど」


「え、なにを?」


コハクが起き上がり、肘で蓋を押しながら外へと出るとベルルが感極まった表情で駆け寄ってきた。


「コハク様!やっぱり本物のコハク様が1番素敵!」


「当たり前だろ。それよかベルル、一瞬だけ留守にする。小僧たちに言っといてくれ」


「コー、どこに行くの?」


にやりと笑った。

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