魔王と王女の物語
外に出れる――


16年間もずっと城の中・・・

出れたとしても城を取り囲む森の中でしか過ごせなかったラスにとって、


外に出れるということが何よりも嬉しくて、ずっと願い続けていたことだった。


「リロイも一緒なの?嬉しい!よろしくね!」


「僕の命に代えてもラス王女・・・あなたをお守りしてみせます」


カイとソフィーの手前上ラスと馴れ馴れしくするわけにもいかずに畏まった態度にラスは頬を膨らませたが、

手を握ったままのコハクを見上げて、首をかしげた。


「この旅って・・・コーを影から切り離すための旅なの?それって・・・どうしてもしなきゃいけないの?」


カイが眉を潜め、コハクがラスを急に抱き上げると同じ目線にして頬にちゅっとキスをした。


「影、やめろ!」


リロイが叫んだが、コハクは一向に構わず頬にキスをしまくると、きょとんとした顔のラスの耳元で囁く。


「ああそうさ。俺とお前を引き離そうとしてるんだ。まあいい、俺にとっても好都合だしな」


――今度はラスの表情が曇る。


父よりも母よりも、誰よりもずっと傍にいてくれて話し相手になってくれたコハクが離れて行ってしまう・・・


それは例えようのない喪失感で、

コハクの首に腕を回して抱き着くと、いやいやをした。


「やだ、コーは悪い人じゃないもん。ずっと傍にいてよ・・・」


「ま、それも面白いけど、俺は実体に戻りたい。戻ったら・・・やりたいことが沢山あるからな。くくっ」


壮絶な美貌にまた邪悪な笑みが浮かんで、ソフィーが耐え切れずに顔を覆い、

ひっついて離れないラスを下ろすと、カイが胸倉を掴んで声を潜め、強く諭した。


「お前を影から引き離すための旅だ。実体に戻ったとしても花嫁にはさせない。リロイがずっとお前を見張っているからな」


「あんなはなたれ小僧に俺を止めることができるのか?もうこの城には戻ってこないから今のうちにチビと家族の最後の晩餐とやらをやっておけよ」


膝を抱えて上座の段差に座り、頬を膨らませているラスが何に腹を立てているのか知っていた。


知っていながらも無視をして、

ラスの心を少しでも独占して、ほくそ笑む。

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