魔王と王女の物語
今まで長く生きてきたが、こんなに太陽を愛しいと思ったことはなかった。


…ラスの影に居たことがいやなわけではない。

ただ今まで感動を覚えたことがほとんどなく、ラスの影になってからは…感動することが多々あった。


そんな中唯一自分にできないことは、太陽の下を歩くことだ。


ラスはいつも影の下を歩き、部屋にはカーテンを引き、常に自分が動き回れる環境を作ってくれた。


あんなにも明るく美しいのに――


自分のせいで16年間もの間そんな暮らしをさせてしまったことに後悔が込み上げてきていた。


「コー、やっぱりここは綺麗だね!それに…コーと一緒に太陽の下歩いてるよ!すっごく嬉しい!」


「感動しすぎだっつーの。それよかチビ…今までごめんな」


脚を止め、頭を下げて突然謝ってきたコハクの様子は神妙で、驚いたラスは顔を覗き込みながら花畑の上にしゃがんだ。


「?どうして謝ってるの?私に何かしたの?」


「や、何かすんのはこれからなんだけどさ」


「?」


色ぼけトークに移行してしまいそうになって口を噤むとコハクも腰を下ろし、瞳を細めてまた太陽を見上げた。


ラスは…そんなコハクに見惚れていた。


「ずっと影の下ばっか歩かせてさ、それに旅の間ずっと曇りだったろ?太陽の光を浴びたかったろ?」


…恐る恐るそう口にしたのに、ラスの顔はきょとんとしていた。



「どうして決めつけるの?私は自分で決めて影の下に居たの。コーと一緒に居たいからそうしたの。それはコーの責任じゃないでしょ?私が決めたことなんだよ」


「…チビ…」


「これからはこうして一緒に太陽の下でお散歩できるでしょ?ずっとずっと一緒だよ。コー、私の夢を叶えてくれてありがとう」



――ラスへの愛情が、一気に膨れ上がった。


そのまま金色の花畑の上にラスを押し倒すと、瞳を潤ませながら額にキスをして、囁いた。


「チビ…もう駄目だ、セーブできねえ…」


「何が?コーどうしたの…真面目な顔してる…」



太陽の下――

コハクが、想いを口に乗せた。



「今ここでお前を抱きたい」



愛したい。


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