魔王と王女の物語
春の気候といってもさすがに太陽の下での連戦で堪えたコハクはラスを金色の花のシーツで包むと自身はパンツだけを穿いて抱き上げた。


「どこ行くの?」


「身体冷やさねえと具合が悪くなるぞ。ふ、ふ、風呂入ろうぜ」


いつも肝心なところでどもってしまう魔王はタラップの階段を下りずにそのまま飛び降りると城内へ入り、オーディンの姿を捜した。


「おい、オーディンはどこに居る?」


「あれっ?魔王様!?オーディン様は魔王様に呼ばれて魔王城に…」


「あー行き違ったかー。まあいいや、またすぐ戻るし」


山羊の頭部を持った魔物に手を振るラス…いや、魔物にまた嫉妬しながらさっさとその場を離れると自室のバスルームへ入り、バスタブの蛇口を捻った。

そうしながら2人でシャワーを浴び、いつもながら全く身体を隠しもしないラスにまたむらむらが止まらない魔王は指を折って何かを数えていた。


「何を数えてるの?」


「ん?いやー、あと何年待てばチビがもっと育つのかなーって思ってさ。1年…いやいやいや、1年も待てるか?先に式を挙げてその後に不死の魔法を…」


独り言炸裂の魔王を無視したラスは丁寧に身体を擦り、汗を流すと今度はコハクの背中を擦ってやり、魔王が動揺した声を上げた。


「ち、チビ!?」


「擦ってあげる。コーも沢山汗かいて気持ち悪いでしょ?」


「じゃ、じゃあさあ、違うとこも…」


「あ!コー、ローズマリーさんからもったバラのオイル出して!まだ私の影の中にある?出せる?」


せっかくのチャンスを逃したものの、ようやくラスと心も身体も結ばれた魔王は上機嫌にラスの影からアロマオイル入りの小瓶を出して手渡した。


「お風呂に入ったらみんなのとこに戻ろうね。コーのお祝いと、あとみんなとお別れを…」


「そういやチビには言ってなかったかもだけど、グラースはここに残るぜ。チビの教育係を頼んだら快諾してくれたぞ」


「え、ほんと!?コー大好き!ありがとう!わあ、嬉しいな、じゃあ…お別れするのはティアラとリロイだけだね」


「しょっちゅう遊びに行きゃいいじゃん。俺が連れてってやるよ」


「うん!」


2人でバスタブに飛び込んだ。
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