魔王と王女の物語
ラスを抱いた後で告白するのも卑怯だったが…

まだラスに秘密にしていることがあり、コハクはラスをベッドに下ろすと髪を拭いてやりながら切り出した。


「まだチビに話してないことがあるんだ」


「うん、なあに?ヤな気分になること?」


「ああ、ヤな気分になる。それでも聴いてくれるか?」


ラスが黙り込んだ。

ラスの背中側に居たコハクは緊張しながら答えを待ち、肩越しに振り返ると頷いたラスの頬にキスをした。


「コーのお嫁さんになるって決めたんだから隠してることは全部話して。ちゃんと聴くから」


「…サンキュ。チビさ、スノウやレイラやエリノアを覚えてるか?」


問うとすぐに頷いたラスはうっとりした表情で出会った素敵な姫君たちを思い出し、同時に少しいやな気分にもなった。

皆が揃いも揃ってコハクに好意があり、いやな気分になる光景を見せつけられたこともあったからだ。


「覚えてるけど…それがどうしたの?」


「…レイラは違うけど、俺はスノウとエリノアを抱いた、あとベルルも」


単刀直入に言うと、ラスは最初何を言われているのかわからないといったきょとん顔で見つめ返してきた。

だがじわじわと言われていることの意味がわかり、ラスの頬がどんどん膨らんだ。


「…ひどい…」


「…だろ?今までの俺はそういう男だった。影のままチビを抱きたくなかったし、チビを大切にしたかったから…だからスノウやエリノアを抱いて誤魔化してきたんだ」


今にも泣きそうな表情になっていたラスはその告白を聞き、ぱっと顔を上げた。


「私の代わりに?」


「あいつらには悪いと思ってるけど、俺は今も昔もチビ一筋だぜ。あいつらもそれをわかってて俺に抱かれたんだ。チビ…今まで隠しててごめん」


…なんだかコハクを責められなくなり、スノウとエリノアを哀れに思ってまた俯くとコハクがやわらかく抱きしめてきた。


「ごめん」


「…ううん。話してくれてありがと。秘密はもうそれだけ?全部話してくれた?」


「ああ、もうない」


――魔物の数を淘汰してきたことや美談は話すつもりはない。


自分はラスの“勇者様”になったのだから、話さない。

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