魔王と王女の物語
その後またケルベロスを呼び出して魔王城へ戻った頃にはすでに半日が過ぎており、城内へ入ると目ざとく見つけたティアラが駆け寄ってきた。


「ラス!…と…魔王…!?」


「なんだよ俺がかっこいいから見惚れてたのか?残念!俺はチビのものになったから!あ、深い意味に取っても良し!」


「ちょっとやだ、コーやめてよっ」


照れるラスの肩を抱き、至極満悦表情のコハクは確かにいつもと違う。

髪もいつもより少し長いし、赤い瞳の色もいつもより明るく見える。

すらりとした背の高さや細さは相変わらずだったが、ティアラはコハクの言葉を深読みし、意味を悟った。


「ラス…その…魔王と…」


「…うん。あのね、グリーンリバーで…」


洗いざらい喋ってしまいそうな勢いのラスに慌てた魔王はラスを抱っこするとティアラとラスに口止めをした。


「お前たちは別にいいけど、このことは小僧には話すなよ。せっかく落ち着いてんのにまた逆上してチビを刺されでもしたら今度こそ俺は小僧を殺すからな」


「…わかったわ」


「うん、わかった」


――確かにリロイは今落ち着いているし、グラースと一緒に城の内部を探検している。

このことを知れたら…また剣を手にラスか魔王を傷つけて大変なことになるかもしれない。


「腹も減ったし、みんなで食おうぜ。チビ、最後の晩餐だからな。わかってるのか?」


「うん。ティアラ…私はコーと一緒にグリーンリバーに住むから時々遊びに来てね。私もコーと一緒に遊びに行くから」


「ええ。それよりラス…その…色々聞かせて。どうだったの?どんな感じだった?」


きゃっきゃと声を上げて螺旋階段を駆け上がって行くティアラとラスを見送りつつ、コハクは欠伸をしながら指を鳴らし、城内の照明を明るくした。


…自分の足元に影がある。

影でいた間は重力を感じないほどに身体が軽かったが…今は重みを感じられるし、体内にはいつも以上に魔力が溢れていた。


「魔法はチビのためにしか使わねえ。俺は…チビのために生きていくんだ」


喜びに満ち、仮眠をするために自室へと向かった。
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