魔王と王女の物語
しばらくコハクと2人でベッドに寝転がっていたが…


何故かコハクが首や頬や瞼に唇を押し付けてくるので、

お尻がむずむずしてしまい、ラスはがばっと起き上がった。


「チビ?」


「旅の準備しなきゃ!馬で行くんだよね?」


まくし立てて慌てまくり、クローゼットを開いて物色するラスの背後に立ち、

かけられているドレスを両手に抱えたコハクをラスが見上げる。


「そんなに持っていけないでしょ?」


「こうすりゃいいんだよ」


――ラスの影に落とした。

だが床に散らばると思っていた何着ものドレスが影に吸い込まれて消えてしまって、


ぺたんと床に座ると自分の影をラスが叩く。


「今どうなったの?」


「魔法。俺は凄腕の魔法使いだからさ、なんでもできるわけ」


「すごーい!コー、偉い偉い」


グリーンの瞳には尊敬の色が浮かんでいて、

魔王は天狗になりながらラスの肩を抱き、また頬にキスをする。


「お前の望みはなんでも叶えてやるよ。なにせ一流だからな俺は」


「ふふっ、コーってなんでもできてすごいね。これとかこれも持って行っていい?」


ラスが普段愛用しているありとあらゆる物を影に放り込んでいくコハクの姿を、ベッドに腰掛けたままずっと眺めていたが…


急にくるっと振り返ったと思ったら蒲団を捲り、強引にベッドに寝かされた。


「コー?」


「眠たいんだろ?寝てていいぜ。その代わり何されても文句言うなよ」


「?なんで眠たいってわかったの?」


「お前がカイの中に居た頃からお前のことなら何でも知ってるからさ。おたまじゃくしの頃からな」


「え?私はコウノトリからの贈り物だよ?おたまじゃくしってどういうこと?」


…コハクが瞳を丸くして手を止め、ラスの不思議そうな顔を覗き込む。


「お前…コウノトリとかマジで言ってんのか?」


「?うん、赤ちゃんってみんなそうでしょ?」


「…俺としたことが、お前に性教育を施すのを忘れてたよ。道中みっちり教えてやるからな」


「?うん、わかった。おやすみなさい」


ため息をついた。


「道のりは長いな」

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