魔王と王女の物語
時間を置いてリロイが部屋を訪ねると…


出てきたのはコハクで、リロイの美貌が思いきり嫌悪に歪んだ。


「いい表情してるぜえ」


「お前の顔なんか見たくない。影に戻れ!」


「しーっ。今チビが寝てんだからでかい声出すなよ」


慌てて口を抑えて中に入ると…


それはもう幸せそうな顔をしたラスがすよすよと眠っていて、リロイの頬が今度は思いきり緩む。


「おい、俺の天使ちゃんに鼻の下伸ばすなよ。ぶっ飛ばすぞ」


…全くもって大人げない魔王がラスの横に横たわり、頬杖を突きながら腰に腕を回して引き寄せた。


「やめろ!」


「しーって言ってんだろが。おい小僧、お前とカイ、なんか企んでるだろ?俺を封じるとかそういう系だろ?」


嘘をつけないリロイの表情が劇的に変わったので、またコハクはにやつきながらリロイの腰に下がっている魔法剣を顎で指した。


「それは俺がカイからやられた時の剣だな。また同じことをしようってのか?」


赤い瞳が明るい色に光り、一瞬リロイはたじろいだが…


この旅に出ると決めた時、カイから正式に白騎士団の隊長としての地位を賜った。


それはつまり…

ラスに求婚できるほどの地位を与えられたということ。


魔王の城へ行き、ラスが棺を開けてコハクを実体に戻し、

そして影から完全に切り離した時、再びこの魔法剣で魔王を今度は確実に亡き者にする。

そのための旅なのだから。


「なんで黙ってんだよ。もっと小僧だった時にした悪戯と同じことをしてやるぞ。ラスの前で恥ずかしい格好にされたいのか?」


「僕もあの時とは違う、お前なんかに………な、ちょ、やめろ!」


「さっきの威勢はどうした?ほら」


コハクがひゅっと指を振ると、自分の意思ではなく勝手に手が動き、


ジッパーに手がかかって、抵抗しようにも全然手が動いてくれない。


「ぽろりと出してみろよ。チビのことだから“それは何?”とか聞いてきたりするかもだぜ」


「ちょ、や、やめ…っ」


そして本当にぽろりとしそうになった時…ようやく身体が動いてジッパーを慌てて上げた。


どこまでも魔王は魔王だった。

< 42 / 392 >

この作品をシェア

pagetop