魔王と王女の物語
リロイがその場に残り、ラスの細い肩に大きな手を置いて優しく微笑んだ。


「僕はまだ陛下とご相談があるから部屋に戻ってて。1人で戻れる?」


「うん、コーが居るから1人じゃないよ、大丈夫」


…そっちの方が余計に心配なんだけど。


――そう言いたいのをなんとか飲み込み、可憐な笑顔を見つめていると…

またコハクが大人げなく、ラスの肩に乗せていた手を思いきり払い飛ばした。


「だから俺のに触るなっつーの」


「お前のじゃない!ラス、必要以上に影と話しちゃいけないよ」


「コーのこと?うん、わかった。明日からずっと一緒だね。楽しみだね」


ぎゅっと抱き着いてきたラスの腰に手を回して頬にチュッとキスをすると、

コハクの顔が最恐に歪んで、優越感に浸りながら、食卓の間の扉を閉めた。


「小僧め…」


「ねえ、コーってフィリア様を知ってるの?なんで?」


「ん?あー…俺の城にカイとフィリアと…あと誰だっけ、覚えてないけど、乗り込んできたわけ。イイ女だったなー」


塔と塔を繋ぐ渡り廊下を歩きながら、満天の星空を見上げた。


「私、やっと外に出れるんだね。リロイが守ってくれるから安心だね。もしかして…リロイが勇者様なのかなあ?」


「んなわけねえだろ。勇者様なのはこの俺!ちゃんと目ぇ開いてんのか?」


「やだ、やめてよっ」


両頬を引っ張られてラスが悲鳴を上げると…



「コハク様!」


「ああ、スノウと…そのお供たちか」



旅支度を終え、最後に一目だけでもコハクを見ようと城内を捜し回っていたスノウが、

ラスなど眼中にないと言わんばかりに駆け寄って、抱き着いた。


「コハク様…お会いしたかった!昨晩はあんなに激しく愛してくださって私…嬉しかった…」


「ご馳走様。悪かなかったぜ」


「!嬉しいっ!」


王子や7人の小人たちの顔が嫉妬に歪み…


そしてラスの唇も、壁に突き刺さりそうなほどに尖っていた。


「チビ?」


「先に戻ってるから!楽しくおしゃべりしたら!?スノウさん、さようなら!」


「ふふ、さようなら」


その言い方に腹が立った。
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