魔王と王女の物語
城下町ゴールドリバー。

沿岸に位置するゴ王国は水に恵まれ、水都としても有名だ。

そこここに橋がかけられていて、夕暮れになるととても美しい光景が見られることで、観光に訪れる者も多い。

橋もデザインが凝っていてなおかつ実用的。

桟橋や跳ね橋…様々な種類の橋がかけてあって、ラスはいちいち歓声を上げていた。


「すごい!リロイ、綺麗だね!」


煉瓦造りの町並み。

だが地震に強い耐性設計で、迷路のように入り組んだ道は万が一敵に攻め込まれた時も住民しかわからないような作りになっている。


――白馬に乗った王女と、王女を守る白騎士団の隊長リロイ。

その組み合わせはあっという間に住民たちに知られることとなり、

前に進めないほど人だかりができてしまって、リロイが大声を張り上げた。


「皆さん、どうか王女がお通りできるようご協力を!」


「ラス王女だ…お可愛らしい…!」


「随一の美姫というお噂は本当だったんだ、王女、どうか握手を!」


「あ、はい」


手を伸ばしかけたが、リロイが馬を挟んできてそれを阻んだ。


「申し訳ない、今時間が無いのでまたの機会に」


リロイもまた若い娘たちの憧れの的で、やわらかい美貌で微笑まれるとそれ以上何も言えず、住民たちは道を開けてラスたちを通した。


「みんなありがとう!行ってきます!」


馬の操り方もうまく、ようやく曲がりくねった街を抜けて、王国から外に出ると…


コハクが影から出てきて指を鳴らし、馬車を指した。


「ここからは魔物が出て来る。まあ出てきたら出てきたでそこの小僧に倒してもらおうぜ。お前は絶対に出て来るなよ」


「え、うん…」


「ラス、平気だよ。そのネックレスは魔物を寄せ付けないから君だけは絶対に襲われないけど用心はしてね」


「うん、わかった。リロイ頼もしい!」


「ふん」


拗ねて鼻を鳴らすと、ラスはコハクの手を握って揺らして茶化した。


「勇者様が私を襲ってくる魔物を全部倒してくれるんでしょ?コーは勇者様じゃないんだ?やっぱりリロイなのかなあ」


「言うじゃねえか」


頬をつねって馬車に無理矢理乗り込ませた。

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