BLack†NOBLE
『でもさぁー瑠威』
『何が? 何が『でも』だ? 文頭に無意味な接続詞を置くな!』
コイツのしゃべり方、腹が立つ。
どうしてだろう?普段の茉莉果お嬢様だって、決して賢いとは言えない。
彼女ならばその全てが可愛らしくて、その全てを許せてしまうのに、コイツは無理だ。
『クロードと喧嘩してるんでしょ? 屋敷に近付かないほうがいいんじゃない?』
建物が疎らになり、道の舗装が荒くなる。
ランボルギーニのルームミラーにぶら下がる、ハート型の飾りが大きく揺れた。
スピードを落とし、路肩に車を停めた。
目障りなハート型の飾りを引きちぎると、後部座席に投げ捨てる。
『ひどいっ! 気に入ってたのに!』
『目障りだったから……それで俺が蔵人の屋敷に向かうと、どうなる? うまく騙して、屋敷の中には入れないか?』
アリシアは恨めがましく後部座席を見つめて、鼻を鳴らした。
『クロードの組織の構成員は、皆頭がいいわ。簡単に屋敷に人を入れたりしない』
『ならば、ひっそりと侵入する』
俺は、シフトに右手をかけた。あまり時間はない。一刻も早く、彼女を迎えに行かなければ何をされるか分からない。
『無理よ。殺される』
その手を、アリシアが押さえて小さく首を振る。