BLack†NOBLE
─────『瑠威、そろそろ起きて』
重い頭を揺すられると、激しい頭痛がする。 こめかみが脈打つようにズキズキと痛んだ。
瞼を一度強く閉じてから、意識が覚醒していく感覚に体を慣らす。肩がかなり痛む、腹の火傷のあとも、殴られた傷も敏感に痛む。
『可愛い寝顔、キスしちゃおうかなぁ♪』
『いい加減にしろ……アリシア』
掠れた声と、力の入らない腕でアリシアを払い除ける。
『ふふん♪ でもあまりに可愛いからほっぺにキスしちゃったし』
シャツで自分の頬をゴシゴシ拭うと、アリシアは聞き取り不可能な早口で不平不満を爆発させた。
勘弁していただきたい。
こちらは、世界で一番愛しい彼女を人質に囚われている。 こんな女と遊んでやる気分じゃない。
『私とキスしたい男が世界には何万人もいるのよ! 有名女優アリシア・キースを軽んじないでちょうだい!』
『では、質問するが世界で何万人かの男がキスをしたいと思われている有名女優アリシア・キースが今一番キスをしたい相手は誰だ?』
『クロード……』
『軽んじてるのは、自分自身だろ。俺はクロードじゃない』