BLack†NOBLE
アリシアが金色のブランドのロゴが入る紺の紙袋を投げてきた。
それをキャッチすると、彼女は俺に背を向けてブリオッシュをかじった。
『シャワーよかったら使って?』
あっちよ、とエミリーが指で示す。
『ありがとう……』
着心地の良さそうなコットンシャツに、ブラックデニム。真新しい着替えを取り出すと、エスプレッソを胃に流し込む。
シャワーを浴びる前に中庭の見える窓辺に立ってみた。日に焼けたカーテンの影から、車を確認する。
エミリーが俺の行動に首を傾げた。
アリシアがカバーをかけたソレは、そのままの形で停車している。
路上に座っていた男たちは移動をしたようだ。通りや、向かいの建物にも怪しい人影はない。
小さなため息を吐き出し、シャワールームに足を向けるとエミリーは洗い立てのバスタオルを提供してくれる。
『シャワー、熱かったり冷たかったりするけど気にしないでね』
『しないよ』
アリシアは、ブリオッシュにはちみつをかけていた。