BLack†NOBLE
『瑠威……』
カルロが俺の肩をたたく。準備は整った合図だ。
俺が二人を殺して、その場を去る。クルーザーで一気に海まで出て北上する作戦だ。
コッグとグレコの部下は金で雇われたか薬を餌にして使われている奴ばかりだ、とレイジがいっていた。二人が撃たれればすぐに逃げ出すだろう。
グレコのまとわりつくように視線が気味が悪い。手が震えた。
グレコは咳をすると喋りだす。
『俺たちはイタリア人だ。俺もコイツもシチリアで生まれ育った』虫が這いずり回るような嫌な声がする。
凄みがあって、聞いているだけで耳を塞ぎたくなる雑音だ。
『お前には、俺たちを殺せない。クロードも殺せなかった』
咳払いをして声の調子を整える。
長年使われていなかったテープレコーダーが再生されるように、また話出す。
『殺されると覚悟していた、俺たちはクロードに敗けた。敗けた奴は死ぬ。マフィアの世界の掟だから……
でもクロードは殺さなかった。死より惨い制裁だ。無一文でアメリカのスラム街に置き去りにされた。
俺たちは互いに二百キロ離れたスラム街に、裸同然で置き去りにされたのさ。
金も身元を証明するものもない、この土地に家や家族、親戚、兄弟を残して捨てられた』
コッグは、もうニタニタもヘラヘラもしていない。
『殺された方がマシだったな。
俺たちは互いに生き続けてこの地に戻ってきた。わかるだろ? 坊ちゃんの出る幕じゃない』