BLack†NOBLE
大丈夫だ。
犇めくメルフィスの男たちは、皆静かに見守っている。
コッグの舌打ちが聞こえる。
『ボスは許してくれないかもしれないだろ……俺は掟に刃向かった……ドラッグ売買に手を出した……』
『そんなこと、蔵人はとっくに知ってる。俺の兄を甘く見るな』
『瑠威、俺はおまえが嫌いだ。何故、この状況でそんなに落ち着いていられる!』
『いられるよ。セシルはメルフィスの一員だ。それにコッグとグレコの目的は俺を殺すことじゃない』
ふと顔を上げた。緊張した面もちの男たち。手には弾丸が装填された銃。
コッグとグレコは顔をひきつらせたまま静止した。
その後ろから、一人の男が歩み寄る。バーラウンジを優雅に気品満ち足た表情でゆっくりと歩く。
黒い瞳、黒髪に、一切の隙を見せない男─────
「蔵人……」