BLack†NOBLE

『よう、コッグ、グレコ久しぶりだな。相変わらず汚い面して、顔洗ってるのか?』


 テーブルに用意されたグラスを手に持ち、軽く回して香りを楽しみ口に含む。

 コッグの余裕は完全に消え去り、グレコはますます石みたいに硬直した。


『なんだよ。挨拶もできないか? そうか、英語じゃないとわからないか。

 ハロー、ハウアーユートゥデイ?』


 最悪だな……。

 なのに、カルロにはウケたようだ。笑いのツボは人それぞれだ。




『貴様……、腹を撃たれて瀕死の重症と聞いていたが』


 コッグは、黄色い歯をギリギリと噛み合わせた。グレコは、穴が空くほど蔵人を睨み付けている。



『さあな? 人違いじゃないのか? お前たち、年だから耳が遠くなったのかもな』

 蔵人は、ククッと笑うと『ああ、長老様たちワインをどうぞ』とおどけてみせた。


 コッグは、完全に怒りに囚われてワイングラスを床に叩き付けた。カッシャーンという耳障りな音が響く。


『何をするんだよ。

 このバーの従業員は最悪だな。マフィアの抗争の最前線で給仕しなきゃならない。バイト代上乗せしといてやらないとな? 折半するか?』


『ふざけるな!』


 コッグが小型の拳銃を蔵人にむけた。


『クロード様!!』


 レイジは、一目散にクロードを庇い。俺の前には、カルロとセシル。

 トリガーは引かれない。引かせない。




『コッグやめとけ、お前たちに勝ち目はない』






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