BLack†NOBLE
溶けたチョコレートをヘラでクルクルと掻き回す。
超強力な惚れ薬とかあれば、例え違法でも間違いなく私はこのチョコレートにソレを混ぜる。
あのクールで冷たく美しすぎる彼が、私を一度でいいから愛してくれるなら何をされてもいい。
『はあ……クロード、クロード……』
溶かしたチョコレートを型に流し込む。
イタリアでは、女性から男性にチョコレートを贈るなんて伝統はないけど……彼は東洋人だ。
東洋の人は、女性から男性にチョコレートを贈り愛の告白をするという伝統があるらしく、私もその伝統に従ってみようと思ってる。
────彼の家は、アルノ河の対岸。フィレンツェの街並みから少し外れた場所にある。調べるのに本当に苦労した。
とても大きなお屋敷を前に深呼吸をする。黒い鉄柵から、中を覗くと高級車が何台も停まっていて……建物はシャトーみたいに素晴らしい。
あの外見で、超お金持ちなんて! 世界中探し回っても、あんな男中々見つけられないだろう。
『ここで、何をしてる?』
こめかみに冷たい鉛の感触。声の主は、この屋敷の護衛だろう。いつの間にか、背後には三人の大男が私を睨み付けていた。
『ク……クロードに会いに来たんだけど……』
大男たちは顔を見合せ、疑わしげに私を見る。
『今すぐ、帰れ』
『バレンタインチョコを届けにきただけよ』