BLack†NOBLE
【サン・バレンティーノ後日談】
レイジside←




─────こんなにも美しいマフィアなど見たことがない。彼に出会った時の第一印象だ。

 黒い髪に黒い瞳、均整のとれた顔立ちは息をのむ程に美しい。


 その瞳が、鋭く歪めば、修羅場を生き抜いてきた名誉ある男たちですら、彼に頭を下げる。


 その残酷さ、だけど慈悲深い行いは闇の世界で知らない者はいない。

 人をモノのように弄び、いたぶり、用のない者は醜く棄てられていった。

 だけど大切にされる者は、とことん大切にされる。


『レイジ、ミラノの売り上げが落ちている。何かあったのか?』


 今日の彼は有能なビジネスマンのようだ。アンティーク彫のディスクに、黒い革張りの椅子に腰をかけて書類に目を通す。


『はい……聞いた話では、不審なモノが出回っているようです……幹部が関わっているかもしれません』


『馬鹿な奴等だ……レイジ。ミラノの上級幹部の行動を監視しろ』



『かしこまりました』



 深く頭を下げて、彼の指示に従う。どんな時だって彼の判断は、的確でミスがない。


 それが、ここ数年続いている絶対統治の勝因だろう。



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