主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息を切らして駆け込んできた雪男は当たり前のように息吹の隣に座り、主さまを不機嫌にさせた。
「雪ちゃんの分冷ましておいたから」
「ん、ありがとな」
すっかり冷めてしまったすまし汁を口に運び、顔が綻んだのを見ながら息吹があたたかいすまし汁を飲み、主さまの視線に気付いて首を傾げた。
「主さま怖い顔してる」
「…元々こんな顔だ」
「主さまが笑ってる顔見てみたいなー」
主さまが心の底から笑っている顔はほとんど見たことがなく、そう言われてしまった主さまは皆の視線に顔をしかめた。
「何故俺を見る」
「笑ってみろ。息吹がそなたの笑みをご所望だぞ」
――もちろん主さまにそんな芸当ができるわけはなく、怒鳴りそうになった時――
「主さまの代わりに俺が笑ってやるよ。ほら」
頼んでもいないのに雪男が爽やか全開で息吹に微笑みかけると、息吹の頬がぽっと桜色に染まったのを主さまは見逃さなかった。
「雪ちゃんって…やっぱりかっこいいね」
「だろ?これでも一応女にもてるんだぜ」
晴明と山姫がにやにや笑う中、自分の前で堂々と息吹に言い寄ろうとする雪男の態度が気に入らなかったが…それよりも息吹の作った朝餉を残したくない主さまは黙々と食べ続ける。
だがそんな伝わりにくい誠意はしっかり息吹に伝わったらしく、完食した主さまの隣に移動すると手を差し出した。
「お代わり要る?」
「…もういい。お前は雪男と仲良く話でもしてろ」
完全にいじけてしまった主さまの機嫌が斜めになった理由が自分にあることに気付くはずもなく、主さまの肩に触れると軽く揺すった。
「主さま怒ってるの?どうして?」
「…もういい。散歩してくる」
息吹の手を振り払って庭に下りると、さっさと裏庭の竹林へ行ってしまったので戸惑う息吹の背中を晴明が押した。
「行って来てやりなさい。そなたとゆっくり話でもしたいのだろう」
「え…、そ、そうなの?じゃあ…行ってきます」
今度は雪男の頬が膨れ、山姫がからからと笑った。
「私たちの娘は人気者だねえ」
「雪ちゃんの分冷ましておいたから」
「ん、ありがとな」
すっかり冷めてしまったすまし汁を口に運び、顔が綻んだのを見ながら息吹があたたかいすまし汁を飲み、主さまの視線に気付いて首を傾げた。
「主さま怖い顔してる」
「…元々こんな顔だ」
「主さまが笑ってる顔見てみたいなー」
主さまが心の底から笑っている顔はほとんど見たことがなく、そう言われてしまった主さまは皆の視線に顔をしかめた。
「何故俺を見る」
「笑ってみろ。息吹がそなたの笑みをご所望だぞ」
――もちろん主さまにそんな芸当ができるわけはなく、怒鳴りそうになった時――
「主さまの代わりに俺が笑ってやるよ。ほら」
頼んでもいないのに雪男が爽やか全開で息吹に微笑みかけると、息吹の頬がぽっと桜色に染まったのを主さまは見逃さなかった。
「雪ちゃんって…やっぱりかっこいいね」
「だろ?これでも一応女にもてるんだぜ」
晴明と山姫がにやにや笑う中、自分の前で堂々と息吹に言い寄ろうとする雪男の態度が気に入らなかったが…それよりも息吹の作った朝餉を残したくない主さまは黙々と食べ続ける。
だがそんな伝わりにくい誠意はしっかり息吹に伝わったらしく、完食した主さまの隣に移動すると手を差し出した。
「お代わり要る?」
「…もういい。お前は雪男と仲良く話でもしてろ」
完全にいじけてしまった主さまの機嫌が斜めになった理由が自分にあることに気付くはずもなく、主さまの肩に触れると軽く揺すった。
「主さま怒ってるの?どうして?」
「…もういい。散歩してくる」
息吹の手を振り払って庭に下りると、さっさと裏庭の竹林へ行ってしまったので戸惑う息吹の背中を晴明が押した。
「行って来てやりなさい。そなたとゆっくり話でもしたいのだろう」
「え…、そ、そうなの?じゃあ…行ってきます」
今度は雪男の頬が膨れ、山姫がからからと笑った。
「私たちの娘は人気者だねえ」