主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
日中はやはり主さまの機嫌が悪くなることが多いので、山姫と雪男が未練たらたらの主さまを引きずるようにして連れ帰り、息吹は久々に屋敷の掃除をして、式神の童女と貝遊びをし、日常に戻っていた。
こうして穏やかに過ごすのも好きだ。
が、妖たちと戯れて騒ぐのも好きだ。
どちらかを選ぶという選択肢は息吹の中には無い。
「父様、ちょっとお昼寝しますね」
「ああ、ゆっくり眠りなさい」
ひと仕事を終えるとさすがに眠たくなり、自室に入ると床を敷き、寝転んだ。
「私が…鵜目姫さんの血縁かあ」
実感はない。
何かの力を使えるわけでもなく、ちゃんと歳相応に成長している、と思う。
妖は本来成長が速いので、やはり長い年月の間に神の力は薄れていったのだろう。
そして主さまは華月の血縁。
鵜目姫も華月も、絡み合う螺旋の運命を今の今まで紡ぎ続けてきたのだ。
「鬼八さん…鵜目姫さんと同じ場所に行けたかな…」
ひとりごちていると睡魔が襲ってきて、息吹が眠りに落ちた。
1度晴明が様子を見に来たが、寝顔を見るとふっと微笑み、部屋を出て行った。
そしてしばらく経った時――
「お前が息吹か…」
男の低い声。
晴明でも主さまでも雪男でもなく、その男は傍らに腰を下ろすと息吹のまっすぐで艶やかな黒髪に触れた。
「なるほどなるほど、皆が夢中になるわけだな」
「んん…主さま…」
息吹が寝言を言って寝返りを打つと男は驚いたようにして手を離したが、くすっと笑うと腰を上げた。
「あ奴め、私がこうして屋敷に上り込んでいるというのに気付きもしないのか」
男が腰を上げ、襖を開けて肩越しに振り返ると口角を上げて微笑んだ。
「また会いに来る」
そして庭に下り、立ち去って行く男の後ろ姿――
九つの真っ白な尾――
男の頭の左右に生える真っ白な耳…
晴明はこの時完全にこの男の術中に嵌まり、侵入に気付けないでいた。
それほどの力を持ち、ひとたび暴れ出せば平安町などあっという間に壊滅してしまうほどの力の持ち主なのだ。
男が息吹にゆっくりと、襲い掛かる。
こうして穏やかに過ごすのも好きだ。
が、妖たちと戯れて騒ぐのも好きだ。
どちらかを選ぶという選択肢は息吹の中には無い。
「父様、ちょっとお昼寝しますね」
「ああ、ゆっくり眠りなさい」
ひと仕事を終えるとさすがに眠たくなり、自室に入ると床を敷き、寝転んだ。
「私が…鵜目姫さんの血縁かあ」
実感はない。
何かの力を使えるわけでもなく、ちゃんと歳相応に成長している、と思う。
妖は本来成長が速いので、やはり長い年月の間に神の力は薄れていったのだろう。
そして主さまは華月の血縁。
鵜目姫も華月も、絡み合う螺旋の運命を今の今まで紡ぎ続けてきたのだ。
「鬼八さん…鵜目姫さんと同じ場所に行けたかな…」
ひとりごちていると睡魔が襲ってきて、息吹が眠りに落ちた。
1度晴明が様子を見に来たが、寝顔を見るとふっと微笑み、部屋を出て行った。
そしてしばらく経った時――
「お前が息吹か…」
男の低い声。
晴明でも主さまでも雪男でもなく、その男は傍らに腰を下ろすと息吹のまっすぐで艶やかな黒髪に触れた。
「なるほどなるほど、皆が夢中になるわけだな」
「んん…主さま…」
息吹が寝言を言って寝返りを打つと男は驚いたようにして手を離したが、くすっと笑うと腰を上げた。
「あ奴め、私がこうして屋敷に上り込んでいるというのに気付きもしないのか」
男が腰を上げ、襖を開けて肩越しに振り返ると口角を上げて微笑んだ。
「また会いに来る」
そして庭に下り、立ち去って行く男の後ろ姿――
九つの真っ白な尾――
男の頭の左右に生える真っ白な耳…
晴明はこの時完全にこの男の術中に嵌まり、侵入に気付けないでいた。
それほどの力を持ち、ひとたび暴れ出せば平安町などあっという間に壊滅してしまうほどの力の持ち主なのだ。
男が息吹にゆっくりと、襲い掛かる。