闇夜に笑まひの風花を

訃報が届いたのは、急に寒くなった頃だった。

『__え……?』

聞き慣れない言葉。
認めたくない報告。

啜り泣くレイカの言葉に、頭が真っ白になった。
耳が機能することをやめたように、音を受け付けない。
心臓が止まったような気がしたのは、気のせいだろうか。

理解できない。
理解したくない。

レイカは、さっき、何と言った……?

情報の処理を投げ捨てた思考。

無情にも、レイカは繰り返した。

『今朝、一宮の使者が参りました。
一宮那乃さまが、今日の未明、息を引き取られたとの由にございます』

__いきをひきとる……?

いきを、しなくなる?

いきをしなくなったら……どうなるの……?

報告の衝撃に思わず呼吸を止めていた私は、苦しさに耐えられずに震える息を吐き出した。

くるしい。

なんで?

ナノはいまいきをしていないのに、どうしてわたしはくるしいの?

くるしいのは、いきるため。

いきをするのは、いきるため。

いきをしなかったら……しんじゃう。

し?

し、シ__死……?

__息をしなかったら、死んじゃう。

じゃあ、ナノは……?

ナノは……?

『__……うそよ……』

いや。
認めない。

『……アンジェ、さま……』

『うそよぉ……っ!!!』

視界が歪む。
涙が頬を伝う。
ぽたぽたと、滴って。

どうして泣くの?
私は何も認めてないのに。

ナノが、死んだだなんて。

そんなこと。
うそだと思うのに。

『アンジェ!』

なんで涙が出るの?
なんでこんなにも胸が痛いの?

こころが、壊れそうに……。

『____っっっ!!!』

『アンジェっ!』

強く。
キツく。
痛いくらいに。
誰かが、崩れそうな身体を抱き締めている。

小さな、腕。
私と同じくらいの。

私を呼ぶ、声。

だれ?

こどうの、おと。

いきている、おと。

『うそよぉっ!!』

涙で視界が見えない。
けれど、誰かが居ることを、温もりが教えてくれる。

肩口に埋めた顔。
私の頬に、髪に、擦り寄せられる人肌。

濡れている。
泣いている。

ハルカさまも、泣いている。

歯を食いしばって。
痛いくらい腕に力を込めて。

__どうして泣くの……?

『……アンジェっ!』

苦しい声。
悲しい、声。

ほんとう、だからなの__?

『……いやだ、よ……っ!ナノぉっ!!!』

うそよ、うそよ、うそよ!
しんじない。

ナノが死んだだなんて……、

私は__!
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