闇夜に笑まひの風花を

ゆるゆると、心地良く揺られる身体。
背と膝を支えているのは、大きな手。

『トゥイン。アンジェは?』

お母様の声。
少し焦っているような、余裕のない声音。

『大丈夫、眠っているだけだよ』

お父様の声が上から聞こえる。

そうか、私は今、お父様に抱きかかえられているんだ。

『もう。無茶ばっかりして……。
無事で良かった、アンジェ』

お母様の声が水気を含む。
きっと目に涙を溜めているのだろう。

目を開けて、ごめんなさいって謝って、安心させてあげたいのに。
疲れきった身体は、言うことを聞かない。

『起きたら叱らなくてはダメね。まさかここまでするなんて……』

呆れた口調でも、声がそれを裏切っている。
震えた涙声。

そんな声で言われても怖くないよ、お母様。

『大丈夫だよ。もう十分反省してる。だいぶ泣かせちゃったからな』

お父様が苦笑しているのが分かる。
私は気を失うまでずっと泣き続けていたから。
ナノのことや自分のしようとしたこと。
いろんな気持ちが混ざって、ただひたすらに涙が止まらなかった。

『ああ、もう。やっぱり私が行けば良かった!あなたのことだから、子供相手でも容赦なんてしてないんでしょう?
もう、どうするのよ。こんなに泣かせて』

冷たくて細い、お母様の指が瞼に触れる。
それがひどく優しくて、私はまた泣きそうになる。

お母様の声は少し憤慨したようなものになった。
それを聞いて、理解する。

私、お母様にもお父様にも心配してもらえてたんだね……。

『いや、あれは必要処置だったと思うよ、ティア。ただ叱るより、十分効果はあったばずさ』

『効果ありすぎよ。いつもいつもあなたは手加減しないんだから』

なかなか聞けない、お母様とお父様の言い合い。
喧嘩にもならない、ただのじゃれ合い。

それを夢現で聞きながら、私の意識はまたふわふわと彷徨う。
二人の声が次第に遠くなって。

やがて辿り着いたのは、知らない景色。
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