大切なもの
「沙和、人たくさん来たから、場所移動しよう」

そう言って樹は、私を支えながら試合会場を後にした。
近くの公園のベンチに腰を下ろす。

「…なにがあった?」

私は首を横に振る。
やっぱり…話せない…。
話すことで、樹を傷付けてしまう…。

「桜庭に…なにか言われた?」
「っ、」
「沙和、ちゃんと話してくれ」
「颯太が来る前に…亜弥ちゃんと…話してて」

私はポツリ、ポツリと話し始めた。

「私と颯太がデートするはずだった…雨の日のこと…話されて…。
颯太には…聞かされてたのに。亜弥ちゃんの口から聞かされると…っ…。
颯太ね…私と付き合ってた時…一度も好きなんて…言ってくれなかった。
なのに…っ…」
「沙和」
「亜弥ちゃんに颯太をあげたつもりなんて…ないのに…っ…!」
「沙和!!」

樹は私を抱き締めた。

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