私は猫



***



ピンポーン



お昼ご飯のパスタをゆでている頃、家のインターホンが鳴った。



「はい」



きっと菜々子さんだろう、と思ってドアを開けた。



「やぁ、おはよ」



「おはようございます、菜々子さん。今日はいつもより早起きなんですね」



菜々子さんがサンダルを脱ぎながらドアを閉めた。



「誰かさんがまた隠し事してるみたいだからさ」



ねぇ、ヒナ。と言いながら私の首に腕を回してきた。



絶対、京のことだ…



「おねーさんになんか言うことあるんじゃないの」



私はやんわりと菜々子さんの手をほどいて、部屋に戻った。



「またクロちゃんが見つけたんですか」



「いや違うよ。艶やかな声が聞こえたからさ」



ソファーにごろんと寝転ぶ菜々子さんは、真っ赤になる私を楽しむように笑った。



「いいいいやいや、そんな」



「ヒナの声可愛いねぇ。ちょっと気が変になるとこだったよ」



「すみませんでした…」



心の中で舌打ちした。京が得意気に笑った顔が浮かんだからだ。



「別にいいけどさ、もう子供じゃないんだからそういうこともある。問題はさ、ちゃんと私に言わなきゃ、ってこと」



私はお鍋の火を止めて、パスタをお皿に盛り付けた。



「相談したいくらいです。ホント」



「ん」



いつもなら呆れたように言う私も、今回は素直に相談したいと思った。



「そうなの。食べおわったらね」



ソースをかけて菜々子さんの前に置いた。



今日のお昼はカルボナーラだ。



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