私は猫
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ピンポーン
お昼ご飯のパスタをゆでている頃、家のインターホンが鳴った。
「はい」
きっと菜々子さんだろう、と思ってドアを開けた。
「やぁ、おはよ」
「おはようございます、菜々子さん。今日はいつもより早起きなんですね」
菜々子さんがサンダルを脱ぎながらドアを閉めた。
「誰かさんがまた隠し事してるみたいだからさ」
ねぇ、ヒナ。と言いながら私の首に腕を回してきた。
絶対、京のことだ…
「おねーさんになんか言うことあるんじゃないの」
私はやんわりと菜々子さんの手をほどいて、部屋に戻った。
「またクロちゃんが見つけたんですか」
「いや違うよ。艶やかな声が聞こえたからさ」
ソファーにごろんと寝転ぶ菜々子さんは、真っ赤になる私を楽しむように笑った。
「いいいいやいや、そんな」
「ヒナの声可愛いねぇ。ちょっと気が変になるとこだったよ」
「すみませんでした…」
心の中で舌打ちした。京が得意気に笑った顔が浮かんだからだ。
「別にいいけどさ、もう子供じゃないんだからそういうこともある。問題はさ、ちゃんと私に言わなきゃ、ってこと」
私はお鍋の火を止めて、パスタをお皿に盛り付けた。
「相談したいくらいです。ホント」
「ん」
いつもなら呆れたように言う私も、今回は素直に相談したいと思った。
「そうなの。食べおわったらね」
ソースをかけて菜々子さんの前に置いた。
今日のお昼はカルボナーラだ。